共有者の一部の者の名義に所有権移転登記又は所有権移転請求権仮登記がされている場合に、他の共有者が妨害排除として右一部の者に対して請求することができる登記手続は、自己の持分についての一部抹消(更正)登記手続に限られる。
共有者の一部の者の名義にされた所有権移転登記又は所有権移転請求権仮登記につき他の共有者が抹消登記手続を求めることができる範囲
民法249条,不動産登記法63条
判旨
不動産の共有者の一人が、自己の持分を侵害して単独名義等の登記を経由した他の共有者に対し、妨害排除として登記の抹消(または更正)を請求できるのは、自己の持分に相当する範囲に限られる。
問題の所在(論点)
共有不動産について、一部の共有者が実体関係に反して自己単独名義等の登記を経由している場合、他の共有者は保存行為または妨害排除請求として、当該登記の全部の抹消を請求できるか。それとも自己の持分相当分に限定されるか。
規範
数名の共有に属する不動産につき、一部の共有者が勝手に自己名義(または第三者名義)の所有権移転登記等を経由した場合、他の共有者が物権的妨害排除請求権として当該登記の抹消または実体的権利に合致させる更正登記を請求できる範囲は、自己の持分を侵害している限度(自己の持分に相当する範囲)に限定される。
重要事実
遺言者Fは、被上告人、上告人A1、同A2を含む計5名に対し、本件各不動産を遺贈した。Fの死亡により、本件不動産は上記5名が各5分の1の割合で取得し、共有関係となった。しかし、上告人A1およびA2は、本件不動産につき各々の単独名義とする所有権移転登記、あるいはA1からの贈与予約を原因とするA2・A3名義の所有権移転請求権仮登記を経由した。これに対し、共有者の一人である被上告人が、右各登記の全部抹消等を求めて提訴した。
事件番号: 昭和37(オ)396 / 裁判年月日: 昭和40年10月12日 / 結論: 棄却
第一審判決主文に民訴法第一九四条にいう明白な誤謬がある場合、控訴裁判所が控訴棄却の判決をするにあたり判決の理由中に理由を示し主文において右誤謬を更正しても違法ではない。
あてはめ
本件不動産は5名の共有であり、被上告人の持分は5分の1である。上告人らが経由した単独名義の登記や仮登記は、被上告人の5分の1の持分を侵害する範囲では無権限の登記であり、妨害排除の対象となる。しかし、残りの5分の4の範囲については、他の共有者の持分に関するものであり、被上告人自身の持分が侵害されているとはいえない。したがって、被上告人の請求は、自己の持分である5分の1に関する部分の抹消(更正)を求める限度で理由があるが、それを超える部分(他の共有者の持分に相当する範囲)については、妨害排除請求権の行使として認めることはできない。
結論
自己の持分を侵害する範囲においてのみ請求が認められる。本件では、登記を被上告人の持分5分の1、上告人らの持分を5分の4とする更正登記手続を求める限度で認容し、全部抹消請求はその余の範囲で棄却すべきである。
実務上の射程
共有持分権に基づく妨害排除請求の限界を示す射程の長い判例である。答案上では、被告名義の登記が「全部無効」ではなく「被告の持分範囲で一部有効」である場合、原告は「自己の持分」を超える部分の抹消を請求できないことを指摘する際に用いる。不法占拠者(第三者)に対する全部明渡請求(保存行為)との違いに留意が必要である。
事件番号: 平成16(オ)402 / 裁判年月日: 平成17年12月15日 / 結論: 破棄差戻
甲名義の不動産につき,甲から乙,乙からYが順次相続したことを原因として直接Yに対して所有権移転登記がされている場合に,甲の相続につき共同相続人Xが存在するときは,Yが上記不動産につき共有持分権を有しているとしても,Xは,Yに対し,上記不動産の共有持分権に基づき,上記登記の全部抹消を求めることができる。
事件番号: 平成13(受)320 / 裁判年月日: 平成15年7月11日 / 結論: 破棄差戻
不動産の共有者の1人は,共有不動産について実体上の権利を有しないのに持分移転登記を了している者に対し,その持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる。
事件番号: 昭和35(オ)1197 / 裁判年月日: 昭和38年2月22日 / 結論: 棄却
一 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。 二 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。 三 …
事件番号: 昭和26(オ)113 / 裁判年月日: 昭和27年5月2日 / 結論: 破棄差戻
調停により取得した不動産の二分の一の共有持分権に基く分割請求権があることを原因として提起した共有物分割請求訴訟において、その請求を棄却した確定判決の既判力は、判決の理由において、共有権の存否につき判断をしている場合であつても、右の調停により共有持分権を取得したかどうかの点までは及ばない。