不動産の共有者の1人は,共有不動産について実体上の権利を有しないのに持分移転登記を了している者に対し,その持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる。
不動産の共有者の1人が不実の持分移転登記を了している者に対し同登記の抹消登記手続請求をすることの可否
民法249条,民法252条
判旨
不動産の共有者は、その持分権に基づき、共有不動産に対して加えられた妨害を排除することができる。したがって、実体上の権利がないにもかかわらず不実の持分移転登記を経由している者に対し、共有者の1人は単独でその抹消を請求できる。
問題の所在(論点)
共有不動産について、一部の共有者の持分について実体上の権利がない不実の持分移転登記がなされている場合、他の共有者は自己の持分権に基づく妨害排除請求(民法249条、252条5項参照)として、当該登記の全部抹消を単独で請求できるか。
規範
不動産の共有者の1人は、その持分権に基づく妨害排除請求として、共有不動産に対して加えられた妨害を排除することができる。不実の持分移転登記がなされている場合には、その登記によって共有不動産に対する妨害状態が生じているといえるから、共有不動産について全く実体上の権利を有しないのに持分移転登記を経由している者に対し、単独でその抹消登記手続を請求することができる。
重要事実
1. 甲が所有していた本件土地について、甲の死亡により上告人ら、乙及び丙の4名が各4分の1の持分で共同相続した。 2. 相続登記と同日、乙から被上告人に対し、代物弁済を原因とする乙持分全部移転登記(本件持分移転登記)がなされた。 3. 上告人らは、乙から被上告人への持分譲渡は無効であると主張し、持分権に基づく保存行為として、被上告人に対し本件持分移転登記の抹消を求めた。
事件番号: 昭和56(オ)817 / 裁判年月日: 昭和59年4月24日 / 結論: その他
共有者の一部の者の名義に所有権移転登記又は所有権移転請求権仮登記がされている場合に、他の共有者が妨害排除として右一部の者に対して請求することができる登記手続は、自己の持分についての一部抹消(更正)登記手続に限られる。
あてはめ
1. 共有者の1人は、自己の持分権を全うするため、共有物に対する妨害を排除する権限を有する。 2. 本件において、乙から被上告人への持分譲渡が無効であれば、被上告人は本件土地について何ら実体上の権利を有しないことになる。 3. このような無権利者名義の不実の持分移転登記が存在することは、共有不動産全体に対する妨害状態に他ならない。 4. よって、他の共有者である上告人らは、自己の持分権を根拠として、被上告人に対し当該不実の登記の抹消を請求できると解される。
結論
他の共有者は、実体上の権利を有しない持分移転登記名義人に対し、単独でその抹消登記手続を請求できる。本件では、持分譲渡が無効であれば上告人らの請求は認められるため、審理のため差し戻すべきである。
実務上の射程
本判決は、共有者による不実の登記の抹消請求について、自己の持分が直接侵害されていない場合でも「持分権に基づく妨害排除」として単独請求を認める。司法試験では、民法252条5項の「保存行為」の枠組み、または持分権に基づく妨害排除請求の性質として論じる。なお、登記名義人が他の共有者である場合には、自己の持分を超える部分の抹消は請求できないとする判例(最判昭38・2・22)との区別に注意が必要である。
事件番号: 昭和35(オ)1197 / 裁判年月日: 昭和38年2月22日 / 結論: 棄却
一 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。 二 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。 三 …
事件番号: 昭和29(オ)4 / 裁判年月日: 昭和31年5月10日 / 結論: 棄却
不動産共有者の一人はその持分権に基き、単独で当該不動産につき登記簿上所有名義を有する者に対しその登記の抹消を請求することができる。
事件番号: 昭和37(オ)396 / 裁判年月日: 昭和40年10月12日 / 結論: 棄却
第一審判決主文に民訴法第一九四条にいう明白な誤謬がある場合、控訴裁判所が控訴棄却の判決をするにあたり判決の理由中に理由を示し主文において右誤謬を更正しても違法ではない。
事件番号: 平成16(オ)402 / 裁判年月日: 平成17年12月15日 / 結論: 破棄差戻
甲名義の不動産につき,甲から乙,乙からYが順次相続したことを原因として直接Yに対して所有権移転登記がされている場合に,甲の相続につき共同相続人Xが存在するときは,Yが上記不動産につき共有持分権を有しているとしても,Xは,Yに対し,上記不動産の共有持分権に基づき,上記登記の全部抹消を求めることができる。