不動産共有者の一人はその持分権に基き、単独で当該不動産につき登記簿上所有名義を有する者に対しその登記の抹消を請求することができる。
不動産共有者の一人のみによる登記簿上の所有名義人に対する登記抹消請求の許否
民法252条,民訴法62条
判旨
不動産の共有者の一人が、その持分に基づき、登記名義人に対して所有権移転登記の全部抹消を求めることは、共有物の保存行為(民法252条ただし書)に該当する。したがって、共同相続人の一人は、他の相続人の同意を得ることなく、単独で当該登記の抹消を請求することができる。
問題の所在(論点)
共同相続人(共有者)の一人が、共有不動産について不実の登記名義を持つ者に対し、単独でその登記の全部抹消を請求することができるか。このような請求が民法252条ただし書の「保存行為」に該当するかが問題となる。
規範
共有者の一人が、その持分に基づき、共有不動産について無権原の登記名義人に対し、当該登記の抹消を求めることは、物権的請求権に基づく妨害排除請求であり、共有物の現状を維持する「保存行為」(民法252条ただし書)に当たる。そのため、各共有者は単独でその全部の抹消を請求し得る。
重要事実
Dが所有していた不動産について、Dが実弟である上告人の名義に仮装して所有権移転登記を行った。その後Dが死亡し、被上告人らが共同相続人となった。被上告人(共同相続人の一人)が、上告人名義の登記は虚偽のものであり無効であるとして、その全部の抹消を求めて提訴した。
あてはめ
本件において、被上告人らはDの死亡により不動産を共同相続しており、共有関係にある。不実の登記がなされている場合、それは共有権に対する妨害である。共有者の一人がこの妨害を排除して登記の抹消を求めることは、共有物全体の価値を維持し、共有者の利益を守る行為である。これは共有物の現状を維持する行為に他ならないため、管理行為(持分の過半数が必要)ではなく「保存行為」といえる。したがって、被上告人は単独でこの権限を行使できると解される。
結論
共同相続人の一人は、単独で本件不動産に対する所有権移転登記の全部の抹消を求めることができる。
実務上の射程
本判決は、無権原の第三者名義の登記に対する抹消請求を保存行為とした。もっとも、他の共有者が登記名義を持っている場合(持分を超えた登記等)については、自己の持分を超える部分の抹消(更正)請求は認められないとするのが後の判例(最判昭38・2・22)であり、相手方が「完全な無権利者」である場合に本判例の射程が及ぶ点に注意が必要である。
事件番号: 昭和34(オ)960 / 裁判年月日: 昭和35年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の共有者は、保存行為として、共有不動産について無断でなされた不実の登記の抹消を単独で請求することができる。 第1 事案の概要:上告人らは、本件家屋が亡父Dの新築所有にかかり、その死亡により共同相続人である上告人ら両名の共有に属するものであると主張した。これに対し、被上告人B1は無断で自己名義…
事件番号: 昭和34(オ)723 / 裁判年月日: 昭和35年12月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所有権移転請求権保全の仮登記後、本登記がなされた場合、仮登記と本登記の間になされた処分は、本登記権利者に対して効力を有しない。また、共有不動産に関する登記の回復や抹消の請求は、保存行為として各共有者が単独で行うことができる。 第1 事案の概要:D所有の建物について、Eが所有権移転請求権保全の仮登記…
事件番号: 昭和35(オ)1197 / 裁判年月日: 昭和38年2月22日 / 結論: 棄却
一 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。 二 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。 三 …