判旨
所有権移転請求権保全の仮登記後、本登記がなされた場合、仮登記と本登記の間になされた処分は、本登記権利者に対して効力を有しない。また、共有不動産に関する登記の回復や抹消の請求は、保存行為として各共有者が単独で行うことができる。
問題の所在(論点)
1. 所有権移転請求権保全の仮登記後の抵当権設定およびそれに基づく競売による処分は、仮登記に基づく本登記権利者に対抗できるか。 2. 共有者の一人が、保存行為として単独で不実の登記の抹消および回復を請求できるか。
規範
1. 不動産登記法(旧法7条2項)に基づき、仮登記に基づき本登記が経由された場合、その本登記の順位は仮登記の順位による。したがって、本登記の内容と抵触する中間処分は、その登記の前後を問わず、本登記権利者に対してその効力を有しない。 2. 共有不動産について不実の登記がなされた場合の抹消登記手続および回復登記手続の請求は、民法252条ただし書の「保存行為」に該当し、各共有者が単独でなし得る。
重要事実
D所有の建物について、Eが所有権移転請求権保全の仮登記を経由した。その後、債権者Fが同建物に抵当権を設定し登記した。その後、Eが仮登記に基づく本登記を経由したが、Fによる抵当権実行の競売が進行し、上告人(被告)が競落して所有権移転登記がなされ、Eの仮登記・本登記は抹消された。Eの相続人である被上告人(原告)は、共有者の一人として、上告人に対し所有権移転登記の抹消および自己の登記の回復を求めて提訴した。
あてはめ
1. 本件では、Eによる所有権移転請求権保全の仮登記と本登記の間に、Fの抵当権が登記されている。この抵当権は、仮登記によって保全された請求権の目的である所有権と抵触するものであるから、本登記権利者たるE(およびその承継人)に対する関係では無効となる。ゆえに、その後の競売手続も無効であり、上告人は所有権を取得できない。 2. 被上告人は他の共同相続人とともに建物を共有しているが、上告人の不実の登記を抹消し、自己の正当な登記を回復することは、共有物の現状を維持する保存行為といえる。
結論
1. 仮登記に基づく本登記権利者は、中間処分による所有権取得を否定し得る。2. 共有者の一人は、保存行為として単独で抹消・回復登記を請求できる。したがって、被上告人の請求を認容した原判決は正当である。
事件番号: 昭和34(オ)960 / 裁判年月日: 昭和35年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の共有者は、保存行為として、共有不動産について無断でなされた不実の登記の抹消を単独で請求することができる。 第1 事案の概要:上告人らは、本件家屋が亡父Dの新築所有にかかり、その死亡により共同相続人である上告人ら両名の共有に属するものであると主張した。これに対し、被上告人B1は無断で自己名義…
実務上の射程
仮登記の順位保全効(対抗力)に関するリーディングケース。中間処分が本登記により排斥される論理を構成する際に引用する。また、共有に関する論点では、登記抹消請求が保存行為に当たることを示す際の定番の判例である。民法252条ただし書の「保存行為」の具体例として、不実の登記の抹消請求を挙げる場合に必須の知識となる。
事件番号: 昭和29(オ)4 / 裁判年月日: 昭和31年5月10日 / 結論: 棄却
不動産共有者の一人はその持分権に基き、単独で当該不動産につき登記簿上所有名義を有する者に対しその登記の抹消を請求することができる。
事件番号: 昭和35(オ)469 / 裁判年月日: 昭和37年2月16日 / 結論: 棄却
仮登記後本登記をするまでの間に、仮登記義務者により本登記の目的たる権利と相容れない処分が行われ、これに基づく第三者の権利取得の登記がなされたとしても、右本登記が為された以上、右第三者の権利取得は否認され、その登記の抹消を求めることができる。(同旨、昭和三二年六月七日第二小法廷判決、民集一一巻九三六頁、昭和三二年六月一八…
事件番号: 昭和35(オ)1299 / 裁判年月日: 昭和38年10月8日 / 結論: その他
建物所有権移転請求権保全の仮登記権利は、本登記をなすに必要な要件を具備した場合でも、本登記を経由しないかぎり、登記の欠缺を主張しうる第三者に対し該建物の明渡を求めることは許されない。