建物所有権移転請求権保全の仮登記権利は、本登記をなすに必要な要件を具備した場合でも、本登記を経由しないかぎり、登記の欠缺を主張しうる第三者に対し該建物の明渡を求めることは許されない。
仮登記の効力。
不動産登記法7条2項,民法177条
判旨
仮登記権利者は、本登記を備えるまでは所有権の取得を第三者に対抗できず、仮登記のままでは建物明渡請求をなしえないが、本登記をなすに必要な要件を具備したときは、仮登記後の物権変動に係る登記の抹消を請求しうる。
問題の所在(論点)
所有権移転請求権仮登記を有する者が、仮登記のまま(本登記未了の状態)で、仮登記後に現れた第三者に対して所有権取得を対抗し、建物の明渡しを請求することができるか。
規範
1. 仮登記は本登記の順位を保全する効力を有するにとどまり、本登記が完了するまでは所有権の取得を対抗しえない(対抗力欠缺)。2. もっとも、仮登記権利者が本登記を経由し、または本登記に必要な要件を具備したときは、仮登記後の物権変動が所有権取得時期の前であっても、これを否認して登記の抹消を請求できる(順位保全的効力)。
重要事実
債権者(被上告人)は、貸金債権の担保として建物の代物弁済予約をし、所有権移転請求権仮登記を経由した。その後、予約完結権を行使して所有権を取得したと主張し、仮登記後に所有権を取得し登記を経由した第三者(上告人)に対し、所有権に基づき、仮登記に基づく本登記手続の履行、仮登記後の登記の抹消、および建物の明渡しを求めた。原審は本登記の有無を確定せずに明渡請求を認容したため、上告人が上告した。
事件番号: 昭和35(オ)469 / 裁判年月日: 昭和37年2月16日 / 結論: 棄却
仮登記後本登記をするまでの間に、仮登記義務者により本登記の目的たる権利と相容れない処分が行われ、これに基づく第三者の権利取得の登記がなされたとしても、右本登記が為された以上、右第三者の権利取得は否認され、その登記の抹消を求めることができる。(同旨、昭和三二年六月七日第二小法廷判決、民集一一巻九三六頁、昭和三二年六月一八…
あてはめ
仮登記後の物権変動の抹消請求については、本登記の順位は仮登記の順位によるため(不動産登記法旧7条2項)、本登記要件を具備すれば仮登記後の第三者の登記を否認できる。一方、建物の明渡請求については、仮登記には本登記と同様の対抗力はないため、本登記を経由しない限り、上告人は「登記の欠缺を主張しうる第三者」に該当する。したがって、被上告人は所有権取得を上告人に対抗できず、即時の明渡請求は認められない。
結論
仮登記に基づく本登記要件を具備すれば後続登記の抹消は請求できるが、本登記を了しない限り、所有権に基づき建物の明渡しを求めることはできない。
実務上の射程
仮登記の順位保全的効力(登記請求権)と対抗力的効力(明渡請求)を峻別する。答案上は、仮登記権利者が実体法上の権利を取得していても、本登記を備えない限り民法177条の対抗要件を具備したことにはならず、不法占有者ではない第三者に対して明渡請求を行うことはできないとするロジックで用いる。
事件番号: 昭和39(オ)231 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
処分禁止の仮処分の登記後に仮処分債務者から第三者に対し所有権の移転登記がされた場合において、仮処分債権者は、債務者との本案訴訟において実体法上の権利の存することを確定しないかぎり、単に仮処分債権者たる地位に基づいて、右第三者に対し、右実体法上の権利を主張して、前記所有権の移転登記の抹消登記を請求することはできない。
事件番号: 昭和34(オ)723 / 裁判年月日: 昭和35年12月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所有権移転請求権保全の仮登記後、本登記がなされた場合、仮登記と本登記の間になされた処分は、本登記権利者に対して効力を有しない。また、共有不動産に関する登記の回復や抹消の請求は、保存行為として各共有者が単独で行うことができる。 第1 事案の概要:D所有の建物について、Eが所有権移転請求権保全の仮登記…
事件番号: 昭和49(オ)1087 / 裁判年月日: 昭和50年11月28日 / 結論: その他
仮登記担保権者が目的不動産を自己の所有に帰属させるとの意思表示をしただけで清算をしないで仮登記のまま目的不動産を第三者に譲渡し、第三者が本登記を経た場合において、本登記が債務者の意思に基づかずにされたときは、債務者は第三者に対して右本登記の抹消手続を請求することができる。
事件番号: 昭和33(オ)1128 / 裁判年月日: 昭和36年11月24日 / 結論: 棄却
甲が乙から宅地を買受けその旨の所有権取得登記を経由したのち、乙の債務不履行を原因として右売買契約が解除された場合には、甲は乙に対し右登記の抹消登記手続を求めることができる。