仮登記後本登記をするまでの間に、仮登記義務者により本登記の目的たる権利と相容れない処分が行われ、これに基づく第三者の権利取得の登記がなされたとしても、右本登記が為された以上、右第三者の権利取得は否認され、その登記の抹消を求めることができる。(同旨、昭和三二年六月七日第二小法廷判決、民集一一巻九三六頁、昭和三二年六月一八日第三小法廷判決、民集一一巻一〇八一頁)
仮登記の効力
判旨
所有権移転請求権保全の仮登記がされた後、本登記がなされた場合には、物権変動の順位は仮登記の時に遡る。したがって、仮登記後に当該権利と相容れない処分により登記を得た第三者の権利取得は、仮登記に基づく本登記により否認される。
問題の所在(論点)
所有権移転請求権保全の仮登記の後に、第三者が登記を備えた場合、後になされた本登記の効力は当該第三者に優先するか。すなわち、仮登記の順位保全的効力の範囲が問題となる。
規範
所有権移転請求権保全の仮登記は本登記のための順位保全的効力を有する。仮登記に基づき本登記がなされたときは、当該物権変動の順位は仮登記の時に遡り、仮登記の時点で本登記がなされたのと同等の対抗力を生ずる。その結果、仮登記後本登記までの間になされた、本登記の目的たる権利と相容れない処分に基づく第三者の権利取得は否定される。
重要事実
不動産所有者Eは、D銀行との間で停止条件付代物弁済契約を締結し、昭和31年5月に所有権移転請求権保全の仮登記を経た。被上告人はD銀行から当該権利を譲り受け、昭和32年9月に仮登記移転登記を受け、昭和33年1月に本登記を完了した。一方でEは、被上告人の本登記前の昭和32年1月に、上告人のため当該建物に抵当権設定登記および所有権移転請求権保全の仮登記を経由させていた。被上告人が上告人に対し、上告人名義の登記の抹消を求めて提訴した。
あてはめ
事件番号: 昭和35(オ)1470 / 裁判年月日: 昭和38年1月22日 / 結論: 棄却
右登記を無効として抹消を求めることはできない。(昭和三〇年(オ)第六三二号同三三年五月九日第二小法廷判決、民集一二巻九八九頁参照)。
本件において、被上告人が備えた本登記の基礎となる仮登記は昭和31年5月に完了しており、上告人が抵当権設定等の登記を備えた昭和32年1月よりも先んじている。仮登記に基づき本登記がなされた以上、対抗力の順位は昭和31年5月に遡及する。上告人の権利取得は、この遡及した対抗力によって否定されるべき「本登記の目的たる権利と相容れない処分」に該当する。したがって、被上告人は上告人に対し、優先する順位を主張して登記の抹消を訴求することが認められる。
結論
仮登記に基づく本登記がなされた場合、その対抗力は仮登記時に遡るため、仮登記後に介入した第三者の権利は否認される。被上告人による上告人の登記抹消請求は認められる。
実務上の射程
不動産登記法上の仮登記の順位保全的効力を確認した基本判例である。司法試験においては、仮登記後の第三者が「正当な利益を有する第三者」として承諾義務を負うか(不動産登記法109条関連)の前提知識として活用する。また、仮登記された権利が譲渡された場合の移転登記の可否や、その後の本登記による優先関係を論じる際の規範として引用する。
事件番号: 昭和35(オ)1299 / 裁判年月日: 昭和38年10月8日 / 結論: その他
建物所有権移転請求権保全の仮登記権利は、本登記をなすに必要な要件を具備した場合でも、本登記を経由しないかぎり、登記の欠缺を主張しうる第三者に対し該建物の明渡を求めることは許されない。
事件番号: 昭和34(オ)723 / 裁判年月日: 昭和35年12月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所有権移転請求権保全の仮登記後、本登記がなされた場合、仮登記と本登記の間になされた処分は、本登記権利者に対して効力を有しない。また、共有不動産に関する登記の回復や抹消の請求は、保存行為として各共有者が単独で行うことができる。 第1 事案の概要:D所有の建物について、Eが所有権移転請求権保全の仮登記…
事件番号: 昭和39(オ)640 / 裁判年月日: 昭和41年3月1日 / 結論: 棄却
抵当権設定登記および同登記より順位の劣後する所有権移転請求権保全の仮登記がなされた不動産に対し、旧国税徴収法による滞納処分の例による公売処分がなされた場合には、右仮登記にかかる所有権移転請求権は、消滅するものと解すべきである。
事件番号: 昭和39(オ)231 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
処分禁止の仮処分の登記後に仮処分債務者から第三者に対し所有権の移転登記がされた場合において、仮処分債権者は、債務者との本案訴訟において実体法上の権利の存することを確定しないかぎり、単に仮処分債権者たる地位に基づいて、右第三者に対し、右実体法上の権利を主張して、前記所有権の移転登記の抹消登記を請求することはできない。