抵当権設定登記および同登記より順位の劣後する所有権移転請求権保全の仮登記がなされた不動産に対し、旧国税徴収法による滞納処分の例による公売処分がなされた場合には、右仮登記にかかる所有権移転請求権は、消滅するものと解すべきである。
抵当権設定登記および同登記より順位の劣後する所有権移転請求権保全の仮登記がなされた不動産に対し旧国税徴収法による滞納処分の例による公売処分がなされた場合と右所有権移転請求権の消長
旧国税徴収法(明治30年法律21号)23条ノ3,旧国税徴収法(明治30年法律21号)24条,旧国税徴収法(明治30年法律21号)28条
判旨
滞納処分による公売の際、消滅すべき抵当権より後順位の所有権移転請求権保全仮登記は、抵当権に対抗できないため公売処分によって当然に消滅する。また、旧国税徴収法上、仮登記権利者への公売通知義務はなく、通知を欠いても処分の違法とはならない。
問題の所在(論点)
1. 公売処分によって消滅する抵当権に劣後する所有権移転請求権保全仮登記は、公売処分により消滅するか。2. 滞納処分において仮登記権利者に対し公売の通知をしないことは、公売処分の取消事由(違法)となるか。
規範
滞納処分による不動産の差押登記前に所有権移転請求権保全の仮登記がなされていても、当該仮登記より先順位に、公売処分によって消滅すべき有効な抵当権設定登記が存在する場合には、仮登記は抵当権に対抗できないため、抵当権の消滅に伴い仮登記された請求権も消滅する。また、滞納処分手続における公売の通知については、法律上の規定がない限り、仮登記権利者に対してこれを行う必要はない。
重要事実
対象不動産には所有権移転請求権保全の仮登記(訴外D名義)がなされていたが、その登記より先順位(同日受付の場合は受理番号が先のもの)に抵当権設定登記が存在していた。その後、旧国税徴収法に基づく滞納処分として差押登記および公売処分が行われた際、処分庁は仮登記権利者に対して公売の通知を行わなかった。上告人は、公売処分によって仮登記が消滅しないこと、および通知を欠いた公売処分の違法性を主張して争った。
事件番号: 昭和39(オ)991 / 裁判年月日: 昭和41年6月17日 / 結論: 棄却
抵当権設定登記および同登記より順位の劣後する所有権移転請求権保全の仮登記がなされた不動産に対し、旧国税徴収法による滞納処分の例による公売処分がなされた場合には、右仮登記上の権利は消滅するものと解すべきである。
あてはめ
1. 不動産登記法上の順位原則によれば、抵当権設定登記が仮登記より先順位である場合、仮登記は抵当権に優先し得ない。公売処分により先順位の抵当権が消滅する以上、これに対抗できない後順位の仮登記もその目的を達し得なくなり、抵当権の実行による売却と同様に消滅すると解される。2. 旧国税徴収法の規定を検討すると、仮登記権利者を公売通知の対象とする明文の規定は存在しない。したがって、通知を欠いたとしても法的手続上の瑕疵は認められず、処分が違法となることはない。
結論
先順位の抵当権が存在する場合、これに劣後する仮登記は公売処分により消滅する。また、仮登記権利者への公売通知を欠いても公売処分は適法である。
実務上の射程
担保権の実行(競売)における「掃き出し」の論理を滞納処分による公売にも適用した事案である。答案上は、仮登記と抵当権の優劣関係を確定する際の基準として、受付番号等の登記の前後を重視する判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)469 / 裁判年月日: 昭和37年2月16日 / 結論: 棄却
仮登記後本登記をするまでの間に、仮登記義務者により本登記の目的たる権利と相容れない処分が行われ、これに基づく第三者の権利取得の登記がなされたとしても、右本登記が為された以上、右第三者の権利取得は否認され、その登記の抹消を求めることができる。(同旨、昭和三二年六月七日第二小法廷判決、民集一一巻九三六頁、昭和三二年六月一八…
事件番号: 昭和35(オ)1299 / 裁判年月日: 昭和38年10月8日 / 結論: その他
建物所有権移転請求権保全の仮登記権利は、本登記をなすに必要な要件を具備した場合でも、本登記を経由しないかぎり、登記の欠缺を主張しうる第三者に対し該建物の明渡を求めることは許されない。
事件番号: 昭和39(オ)231 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
処分禁止の仮処分の登記後に仮処分債務者から第三者に対し所有権の移転登記がされた場合において、仮処分債権者は、債務者との本案訴訟において実体法上の権利の存することを確定しないかぎり、単に仮処分債権者たる地位に基づいて、右第三者に対し、右実体法上の権利を主張して、前記所有権の移転登記の抹消登記を請求することはできない。