右登記を無効として抹消を求めることはできない。(昭和三〇年(オ)第六三二号同三三年五月九日第二小法廷判決、民集一二巻九八九頁参照)。
被担保債権である現存の債権および将来成立すべき債権を現存の貸金債権としてなされた抵当権設定登記の効力。
不動産登記法117条
判旨
不動産の二重譲渡において、第一の譲受人が登記を備える前に、第二の譲受人が背信的悪意者に当たらない限り、登記を先に備えた者が所有権取得を対抗できる。抵当権設定においても同様に、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者の範囲は、自由競争の範囲内にある限り制限されない。
問題の所在(論点)
民法177条の「第三者」の範囲と、登記の欠缺を主張し得る正当な利益の有無。また、要素の錯誤(旧民法95条)の成否が争点となった。
規範
不動産に関する物権の得喪及び変更は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない(民法177条)。ここにいう「第三者」とは、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する者を指す。自由競争の範囲内であれば、単に債務者の資産状態や物権変動の事実を知っている者(単純悪意者)であっても、登記を先に備えることで優先し、その登記を有効に主張することができる。
重要事実
上告人(第一譲受人側)は、本件不動産について権利を有していたが、登記を備えていなかった。その後、被上告人らが本件不動産に抵当権を設定し、その登記を了した。上告人らは、被上告人らに対して本件抵当権設定登記の抹消を求めて提訴した。上告人らは、被上告人らによる抵当権設定が要素の錯誤に基づく無効であることや、登記の欠缺を主張する正当な利益を欠くことなどを主張したが、原審はこれを排斥した。
事件番号: 昭和35(オ)469 / 裁判年月日: 昭和37年2月16日 / 結論: 棄却
仮登記後本登記をするまでの間に、仮登記義務者により本登記の目的たる権利と相容れない処分が行われ、これに基づく第三者の権利取得の登記がなされたとしても、右本登記が為された以上、右第三者の権利取得は否認され、その登記の抹消を求めることができる。(同旨、昭和三二年六月七日第二小法廷判決、民集一一巻九三六頁、昭和三二年六月一八…
あてはめ
最高裁は、先行する判例(昭和33年5月9日判決)を引用し、原審の判断を正当として是認した。上告人らが登記を備えていない以上、先に抵当権設定登記を備えた被上告人らに対して、その物権変動を対抗することはできない。被上告人らが背信的悪意者に該当するといった特段の事情(自由競争の枠を逸脱するような背信性)は、確定した事実関係からは認められない。また、要素の錯誤に基づく抗弁についても、原判決の説示に不備はなく、無効を認めるには至らないと判断された。
結論
上告人らの請求を排斥した原判決は正当であり、本件上告は棄却される。登記を先に備えた被上告人らによる抵当権設定登記の抹消を求めることはできない。
実務上の射程
民法177条の「第三者」に関する典型的な判例法理を確認するものである。実務上は、登記の先後によって決着するのが原則であり、対抗関係に立つ者が「第三者」から除外されるのは、背信的悪意者(信義則上、登記の欠缺を主張する資格がない者)に限定されることを示唆している。答案上は、二重譲渡や抵当権の競合において、登記の有無を基礎とした上で、背信的悪意者該当性を検討する際の前提として位置づけられる。
事件番号: 昭和38(オ)412 / 裁判年月日: 昭和39年8月13日 / 結論: 棄却
不動産所有権を取得したが本登記手続を経ない仮登記権利者は、右不動産上の抵当権者に対し被担保債務が弁済されたことを理由に当該抵当権設定登記の抹消登記手続を請求し得ない。
事件番号: 昭和33(オ)767 / 裁判年月日: 昭和35年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記手続において、代理人が本人及び相手方の双方を代理する場合であっても、それが既に成立している法律関係に基づく登記義務の履行であるときは、民法108条本文の禁止する双方代理には当たらない。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の間の不動産取引に関連し、特定の書面(丙第2号証)が上告人の意思に基…
事件番号: 昭和44(オ)1012 / 裁判年月日: 昭和45年2月24日 / 結論: 棄却
甲は、乙が代表者である丙組合と丁会社との紛争解決などのために、戊に合計九〇万円を融資し、その債務担保のため本件土地につき、戊から譲渡担保の設定を受け、一方、乙は、右のような事情から右担保権を取得した甲のために、その権利行使の障害となる根抵当権を自ら放棄したものであるなど判示事実関係のもとにおいては、乙は、その後戊との間…