判旨
不動産登記の存在から実体法上の権利関係が推認されるという登記の推定力を認めるとともに、二段の推定に関し、印影が本人の印章によるものであれば、特段の事情がない限り文書全体の真正成立が推定されるとした。
問題の所在(論点)
1. 不動産登記に実体的な権利関係を推定させる効力が認められるか。 2. 本人の印章による印影が認められる場合、文書の真正成立はどのように推定されるか(民訴法228条4項の解釈)。
規範
1. 登記簿の記載は権利関係を表示する公の記載であるから、ある土地について所有権取得の登記が存在する以上、当該土地は一応当該登記名義人の所有に属するものと推定される(登記の推定力)。 2. 私文書の作成名義人の印影が当該名義人の印章によるものであるときは、反証のない限り、当該文書は作成名義人の意思に基づいて成立したものと推定される(民事訴訟法228条4項の推定、いわゆる二段の推定の前段)。
重要事実
被上告人の父Dは、上告人の父Eの負債整理の際、貸金担保として土地等を被上告人名義で買い受け、以後被上告人側で耕作を継続した。Dの死後、被上告人は上告人の財産を管理していた母Hの承諾を得て、司法書士Iに登記手続を委託した。Iは登記必要書類を作成し、Hから上告人の印を押捺してもらった上で登記を完了した。これに対し、上告人は当該登記の有効性や文書の真正を争った。
あてはめ
1. 本件土地には被上告人名義の所有権移転登記が存在するため、登記の推定力により、本件土地は一応被上告人の所有に属するものと推定される。 2. 証拠上、登記申請書類等に顕出された上告人の印影が、上告人の印章によるものであることに争いがない。また、被上告人が勝手に押印した事実は認められず、上告人の母Hが書類に押印したことが認定されている。したがって、特に反証のない限り、これら書類は上告人の意思に基づき真正に成立したものと推定される。
結論
本件土地は被上告人の所有に属すると認められ、本件登記手続に係る文書も真正に成立したものと認められる。したがって、上告人の請求は排斥される。
事件番号: 昭和34(オ)632 / 裁判年月日: 昭和35年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の取消しには、自白が真実に反し、かつ錯誤に基づいたものであることの証明を要するが、自白が真実に反することが証明された場合には、特段の事情がない限り、錯誤によるものと推認される。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、本件不動産の所有権に基づき、上告人(被告)らに対して所有権移転登記の抹…
実務上の射程
実務上、権利自白や登記の推定力を用いて所有権を立証する際の根拠となる。特に「二段の推定」に関しては、印影が本人(または正当な権限者)の印章によるものであることが確定すれば、作成者の意思に基づく押印が推定され、結果として文書全体の成立の真正(228条4項)が導かれるという論理構成を示す重要判例である。
事件番号: 昭和36(オ)356 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
諸般の証拠を総合してある事実を認定するにあたり、その用に供せられた証人の供述中に認定事実に反する趣旨の部分が存在する場合でも、その部分を証拠として採用しなかつた旨判文上明示する必要はなく、その供述内容と判文の認定事実とを対照して、どの部分を採用し、どの部分を排斥したものであるかが了知できれば足りる。
事件番号: 昭和36(オ)474 / 裁判年月日: 昭和38年8月8日 / 結論: 棄却
不動産登記法第二条第一号の仮登記をなすべき場合に同法第二条第二号の仮登記がなされたときでも、右仮登記は順位保全の効力を有する。
事件番号: 昭和32(オ)723 / 裁判年月日: 昭和34年11月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法110条の表見代理における「正当な理由」の存否は、代理人の年齢や家族関係、取引相手との距離等の具体的事情を総合考慮して判断される。本件では、80歳の父が子の代理人として振る舞った際、相手方が近隣居住者であっても直ちに過失があるとはいえず、代理権があると信じるに足りる正当な理由が認められた。 第…
事件番号: 昭和26(オ)840 / 裁判年月日: 昭和29年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記の記載が取得原因において事実と異なっていたとしても、現在の権利関係に合致している限り、その登記の抹消を請求することはできない。 第1 事案の概要:亡Dは、隠居前に本件不動産を被上告人に対して贈与した。しかし、本件不動産に関する登記上の取得原因は、この贈与という事実とは異なる内容で記載され…