諸般の証拠を総合してある事実を認定するにあたり、その用に供せられた証人の供述中に認定事実に反する趣旨の部分が存在する場合でも、その部分を証拠として採用しなかつた旨判文上明示する必要はなく、その供述内容と判文の認定事実とを対照して、どの部分を採用し、どの部分を排斥したものであるかが了知できれば足りる。
証言の一部の排斥は明示するを要するか
民訴法191条1項3号
判旨
実体上の権利変動に基づかず、かつ登記申請の意思も欠いたままなされた登記は無効であり、その登記名義人から抵当権の設定を受けた第三者は、不動産登記に公信力がない以上、真の所有者に対して自己の権利を対抗できない。
問題の所在(論点)
実体上の権利変動がなく、登記申請の意思も欠いたままなされた不実の所有権登記に基づき、新たに利害関係を持った第三者(抵当権者等)に対し、真の所有者は登記の欠缺を理由に権利を対抗できるか。民法177条の「第三者」の範囲と登記の公信力の有無が問題となる。
規範
不動産登記制度において、登記には公信力が認められない。したがって、実体上の権利移転の合意が存在せず、かつ登記申請の意思を欠いた状態でなされた不実の登記に基づく権利取得を、真の所有者に対抗することはできない。
重要事実
地主Eは、被上告人に対し第2目録土地を売却したが、誤って第1目録土地の登記書類を被上告人の代理人Dに交付した。Dは、第2目録土地を自己名義にする意図で手続きを行ったが、書類の誤りにより第1目録土地について自己名義の所有権移転登記を完了させてしまった。その後、Dは第1目録土地について上告人銀行に対し根抵当権を設定し、その登記を完了した。真の所有者である被上告人が、上告人銀行に対し根抵当権設定登記の抹消を求めた事案である。
事件番号: 昭和34(オ)246 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記の存在から実体法上の権利関係が推認されるという登記の推定力を認めるとともに、二段の推定に関し、印影が本人の印章によるものであれば、特段の事情がない限り文書全体の真正成立が推定されるとした。 第1 事案の概要:被上告人の父Dは、上告人の父Eの負債整理の際、貸金担保として土地等を被上告人名義…
あてはめ
本件におけるD名義の登記は、Dが第1目録土地の所有権を取得した事実がないにもかかわらずなされたものであり、かつ当該土地についての登記申請の意思も欠いていた。このように実体関係と符合しない無効な登記である以上、これに基づき設定された上告人銀行の根抵当権も権利の根拠を欠く。我が国の法制上、登記に公信力は付与されていないため、上告人銀行は不実の登記を信頼したとしても保護されず、真の所有者である被上告人に対し根抵当権を主張できない。したがって、上告人銀行は抹消登記手続義務を負う。
結論
上告人銀行の根抵当権設定登記は無効であり、その抹消を命じた原判決は正当である。上告を棄却する。
実務上の射程
登記の公信力を否定する基本判例である。答案上では、虚偽表示(民法94条2項)やその類推適用が問題とならない「純然たる不実登記」のケースにおいて、登記に公信力がないことを端的に指摘する際に引用する。94条2項類推適用の要件(帰責性など)を検討する前の前提議論として位置づけられる。
事件番号: 昭和33(オ)251 / 裁判年月日: 昭和36年1月17日 / 結論: 棄却
病身の夫が家族との不和と療養の関係からさして遠方でない土地に別居中、妻が無断で夫の印章を偽造し、夫の代理名義で夫所有の土地家屋を代金三一〇万円で売却した場合、交渉の行われた場所が当該の家屋であり、家族の収入は妻名義でなす貸間収入で賄われており、成人した子供達が交渉の際同席する等、一応妻に代理権があると信じさせるような事…
事件番号: 昭和36(オ)572 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
実体にそわない所有権移転登記は、その抹消登記手続がなされていなくても、第三者は右登記を受けた者の所有権取得を否認し得る。
事件番号: 昭和36(オ)1283 / 裁判年月日: 昭和39年3月12日 / 結論: 棄却
弁論の全趣旨が何をさすかを具体的に判文に説示する必要はない。
事件番号: 昭和37(オ)396 / 裁判年月日: 昭和40年10月12日 / 結論: 棄却
第一審判決主文に民訴法第一九四条にいう明白な誤謬がある場合、控訴裁判所が控訴棄却の判決をするにあたり判決の理由中に理由を示し主文において右誤謬を更正しても違法ではない。