判旨
裁判上の自白の取消しには、自白が真実に反し、かつ錯誤に基づいたものであることの証明を要するが、自白が真実に反することが証明された場合には、特段の事情がない限り、錯誤によるものと推認される。
問題の所在(論点)
裁判上の自白が成立している場合、どのような要件があればその取消しが認められるか。特に、錯誤の要件についてどのように立証すべきかが問題となる。
規範
裁判上の自白を撤回・取消すためには、①自白が真実に反すること、および②錯誤に基づくことの証明を要する。ただし、自白が真実に反することが立証されたときは、特別の事情がない限り、錯誤に基づくものと推認するのが相当である。
重要事実
被上告人(原告)は、本件不動産の所有権に基づき、上告人(被告)らに対して所有権移転登記の抹消等を求めた。被上告人は訴状および第一審の準備書面において、一度は不動産の所有権の帰属について自白と評価され得る陳述をしたが、後にこれを取り消した。被上告人は司法書士に書面作成を依頼しており、その記載内容は本件不動産の所有名義を単なる名義貸し(通謀虚偽表示)とし、実体上の所有権は自己にあると主張する真意を正確に反映したものではなかった。
あてはめ
まず、証拠によれば、被上告人の真意は「実体上の所有権は自己にある」という点にあり、従前の陳述は客観的真実に反することが認められる。次に、錯誤の要件について検討するに、本件書面は司法書士に依頼して作成されたもので、必ずしも被上告人の真意を如実に表明したものではなかった。このように、自白が真実に反する場合には、特段の事情がない限り錯誤が推認されるところ、本件において当該推認を妨げる特別の事情は認められない。したがって、本件自白は錯誤に基づくものと認められる。
結論
被上告人による裁判上の自白の取消しは有効であり、真実の権利関係に基づき被上告人の請求を認容した原審の判断は正当である。
事件番号: 昭和34(オ)246 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記の存在から実体法上の権利関係が推認されるという登記の推定力を認めるとともに、二段の推定に関し、印影が本人の印章によるものであれば、特段の事情がない限り文書全体の真正成立が推定されるとした。 第1 事案の概要:被上告人の父Dは、上告人の父Eの負債整理の際、貸金担保として土地等を被上告人名義…
実務上の射程
民事訴訟法上の自白の撤回を論じる際のリーディングケースである。答案では、原則として自白の撤回は認められないとした上で、例外としての『反真実』および『錯誤』の要件を挙げ、前者の立証があれば後者が推認されるという判例の論理を、錯誤の立証責任を軽減する趣旨で活用する。
事件番号: 昭和33(オ)943 / 裁判年月日: 昭和35年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の撤回は、その自白が真実に反し、かつ、錯誤に基づくものであるときは、適法に認められる。また、付随的義務の不履行を理由とする売買契約の解除は認められない。 第1 事案の概要:本件土地の売買において、履行期等に関する特約の有無が争点となった。控訴代理人は当初、特約が存在する旨の準備書面を提…
事件番号: 昭和31(オ)445 / 裁判年月日: 昭和31年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定において、相反する当事者の陳述や証人の証言から、いずれを信用して採用し、いずれを排斥するかは、特段の事情がない限り裁判所の自由な心証に委ねられる。 第1 事案の概要:上告人は、消費貸借の弁済期に関する認定、および被上告人による弁済の提供の事実認定に際し、原審が特定の陳述を信用し、他を排斥し…
事件番号: 昭和36(オ)576 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の撤回は、自白が真実に反し、かつ錯誤に基づくことが証明された場合に限り許される。ただし、自白が真実に反することの証明があるときは、反証がない限り錯誤によるものと事実上推定される。 第1 事案の概要:被上告人(原告)らは、本件山林の譲渡担保契約の内容に関して一定の自白を行っていた。しかし…
事件番号: 昭和32(オ)723 / 裁判年月日: 昭和34年11月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法110条の表見代理における「正当な理由」の存否は、代理人の年齢や家族関係、取引相手との距離等の具体的事情を総合考慮して判断される。本件では、80歳の父が子の代理人として振る舞った際、相手方が近隣居住者であっても直ちに過失があるとはいえず、代理権があると信じるに足りる正当な理由が認められた。 第…