判旨
裁判上の自白の撤回は、その自白が真実に反し、かつ、錯誤に基づくものであるときは、適法に認められる。また、付随的義務の不履行を理由とする売買契約の解除は認められない。
問題の所在(論点)
1. 準備書面による自白が錯誤に基づく場合に、その撤回が認められるか。 2. 売買契約とは別個の法律関係から生じた税金立替金の支払義務不履行を理由に、当該売買契約を解除できるか。
規範
1. 裁判上の自白の撤回が許されるためには、その自白が真実に反すること、および錯誤に基づいたものであることの証明を要する。 2. 債務不履行を理由とする契約解除が認められるためには、不履行となった義務が契約の主要な債務であることを要し、別個の法律関係から生じた付随的義務の不履行は、特段の事情がない限り解除事由とはならない。
重要事実
本件土地の売買において、履行期等に関する特約の有無が争点となった。控訴代理人は当初、特約が存在する旨の準備書面を提出したが、これは誤記に気付かず提出されたものであった。実際には特約はなく、代理人は特約がない事実を立証しようとしていた。また、上告人は、被控訴人が本件土地の税金の立替金支払義務を怠ったことを理由として、売買契約の解除を主張した。
あてはめ
1. 控訴代理人は特約がない事実を立証しようとしていたにもかかわらず、誤記に気付かず特約がある旨の書面を提出したのであるから、当該自白は真実に反し、かつ錯誤に基づくものといえる。したがって、自白の撤回は適法である。 2. 税金の立替金支払義務は、本件売買契約の主要な債務ではなく、別個の法律関係から生じた付随的義務にすぎない。かかる義務の不履行は、本件売買契約そのものを解除し得る事由にはあたらない。
結論
1. 自白の撤回は認められ、特約の存在は否定される。 2. 売買契約と別個の義務の不履行を理由とする解除は無効である。
事件番号: 昭和34(オ)632 / 裁判年月日: 昭和35年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の取消しには、自白が真実に反し、かつ錯誤に基づいたものであることの証明を要するが、自白が真実に反することが証明された場合には、特段の事情がない限り、錯誤によるものと推認される。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、本件不動産の所有権に基づき、上告人(被告)らに対して所有権移転登記の抹…
実務上の射程
自白の撤回については、真実に反することの証明があれば錯誤は推定されるという実務運用(最判昭25・11・21等)を踏まえつつ、本判決は両要件の充足を肯定する判断枠組みとして引用できる。解除に関しては、付随的義務のみの不履行では解除権が発生しないという基本原則を確認する際に有用である。
事件番号: 昭和33(オ)718 / 裁判年月日: 昭和36年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない契約条件(代金決済方法等)を認定して売買契約の効力を認めることは、当事者の主張・立証の範囲内であれば弁論主義に反しない。また、特定の買戻し合意や代金決済合意を含む売買契約であっても、直ちに公序良俗に反して無効となるものではない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は上告人(被…
事件番号: 昭和33(オ)554 / 裁判年月日: 昭和36年8月17日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】独立当事者参加訴訟において、一当事者が証書の成立を認める自白をしても、参加人がこれを争う以上、当該自白の効力は参加人には及ばず、二段の推定(民訴法228条4項)も適用されない。 第1 事案の概要:不動産所有権移転登記手続請求事件の控訴審において、第三者Aが民訴法47条に基づき独立当事者参加した。本…
事件番号: 昭和35(オ)523 / 裁判年月日: 昭和37年2月23日 / 結論: 棄却
上告判決が破棄の理由とした判断外の点については、差戻後の控訴審は差戻前と異なる事実認定をしても違法でない。
事件番号: 昭和28(オ)533 / 裁判年月日: 昭和31年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が明示的に事実を主張していない場合であっても、証拠の申出や弁論の全趣旨から、その事実を主張する意思が認められるのであれば、裁判所は当該事実を認定して判決の基礎とすることができる。 第1 事案の概要:上告人が被上告人に対し請求を行った事案において、被上告人は解除権の留保およびこれに基づく契約解…