上告判決が破棄の理由とした判断外の点については、差戻後の控訴審は差戻前と異なる事実認定をしても違法でない。
上告判決が破棄の理由とした判断外の事実認定
民訴法407条2項
判旨
口頭弁論期日においてなされた自白の撤回は、相手方がこれに対して異議を述べなかった場合には、有効な撤回として認められる。
問題の所在(論点)
口頭弁論期日においてなされた自白の撤回に対し、相手方が異議を述べなかった場合、当該自白の撤回は有効となるか。
規範
訴訟上の自白が成立した場合、原則として撤回は許されないが、例外として(1)相手方の同意がある場合、(2)自白が真実に反しかつ錯誤に基づくものであることが証明された場合には、その撤回が認められる。このうち、相手方の同意については、明示的なものに限らず、撤回の申し立てに対して相手方が異議を述べないという黙示的な態様によっても認められ得る。
重要事実
上告人の先代Dが被上告人の先々代Eから金員を借り入れ、その担保として本件不動産の所有権を移転した(譲渡担保)と主張して、弁済による所有権回復を理由とする登記手続を求めた事案。第一審において、被上告人側は当初、売渡担保(譲渡担保)の事実を認める旨の自白をしたが、その後の口頭弁論期日において当該自白を撤回し、事実を否認した。この撤回に対し、上告人側の代理人は何ら異議を申し述べなかった。
事件番号: 昭和33(オ)943 / 裁判年月日: 昭和35年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の撤回は、その自白が真実に反し、かつ、錯誤に基づくものであるときは、適法に認められる。また、付随的義務の不履行を理由とする売買契約の解除は認められない。 第1 事案の概要:本件土地の売買において、履行期等に関する特約の有無が争点となった。控訴代理人は当初、特約が存在する旨の準備書面を提…
あてはめ
本件において、被上告人ら代理人は昭和29年12月14日の口頭弁論期日において、先に認めていた売渡担保の事実に関する自白を撤回する旨の意思表示を行っている。これに対し、上告人代理人はその場で直ちに、あるいはその後の手続において異議を申し述べた形跡がない。このように、一方当事者による自白の撤回に対して相手方が異議を述べない場合には、撤回に対する相手方の同意があったものと解するのが相当である。
結論
自白の撤回に対して相手方が異議を述べなかった以上、当該自白は有効に撤回されたものと認められる。
実務上の射程
自白の撤回要件(相手方の同意)に関する判断指針を示す。実務上、相手方が不用意に撤回を放置した場合、同意があったものとみなされるリスクを示唆しており、準備書面や期日での異議留保の重要性を裏付ける事案として機能する。
事件番号: 昭和31(オ)1033 / 裁判年月日: 昭和33年4月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白が成立するのは主要事実に限られ、間接事実に関する自白には拘束力が生じない。また、自由心証主義の下では、間接事実が存在したとしても、裁判所が直ちに主要事実を認定すべき義務を負うものではない。 第1 事案の概要:上告人は、Dから上告人への贈与契約が成立したと主張したが、原審はその主張を排斥…
事件番号: 昭和34(オ)632 / 裁判年月日: 昭和35年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の取消しには、自白が真実に反し、かつ錯誤に基づいたものであることの証明を要するが、自白が真実に反することが証明された場合には、特段の事情がない限り、錯誤によるものと推認される。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、本件不動産の所有権に基づき、上告人(被告)らに対して所有権移転登記の抹…
事件番号: 昭和30(オ)503 / 裁判年月日: 昭和31年12月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の撤回は、自白が真実に反し、かつ錯誤に基づいたものである場合に認められるが、相手方の主張の変遷などの弁論の全趣旨に照らし、錯誤が肯認できる場合にはその取消しは有効である。 第1 事案の概要:第一審原告(被上告人)は、当初、自ら山林を被告らに売り渡し、後に契約を解除したが受領代金10万円…
事件番号: 昭和38(オ)1208 / 裁判年月日: 昭和39年10月20日 / 結論: 破棄差戻
原告主張の甲売買を被告が乙売買と混同、錯誤して自白したものと認定した場合において、甲乙間には成立日時において九ケ月、目的土地の面積において二倍、代金において一一倍の開きがあるのみならず買受人も異る事情にあるときには、右錯誤の認定は経験則に照らし肯認しえない。