判旨
裁判上の自白の撤回は、自白が真実に反し、かつ錯誤に基づくことが証明された場合に限り許される。ただし、自白が真実に反することの証明があるときは、反証がない限り錯誤によるものと事実上推定される。
問題の所在(論点)
裁判上の自白の撤回が認められるための要件は何か。特に、錯誤の要件をいかに判断すべきか。
規範
裁判上の自白を撤回するためには、原則として、①自白が真実に反すること、および②錯誤に基づくこと、の双方を証明しなければならない。ただし、真実と反する証明がなされた場合には、特段の事情がない限り、錯誤による自白であると推認して差し支えない。
重要事実
被上告人(原告)らは、本件山林の譲渡担保契約の内容に関して一定の自白を行っていた。しかし、その後の審理において、当該自白内容が真実に合致しないことが明らかになった。上告人(被告)は、第三者との関係において結論が同一である以上、錯誤は認められないと主張して自白の撤回を争ったが、原審は自白の撤回を認めたため、上告人が上告した。
あてはめ
本件において、被上告人らが行った譲渡担保契約の内容に関する自白は、認定された事実関係に照らせば真実に反するものであった。自白が真実に反することの証明がなされた以上、特段の反証がない限り、当該自白は錯誤によってなされたものと認定できる。上告人は、目的物の転得者との関係で効力が同一であることをもって錯誤を否定するが、自白の対象は契約内容そのものであり、錯誤の存在を否定する理由にはならない。
結論
自白が真実に反することの証明があれば、錯誤の存在を推認できる。したがって、原審が自白の撤回を認めた判断に違法はなく、上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
事件番号: 昭和30(オ)503 / 裁判年月日: 昭和31年12月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の撤回は、自白が真実に反し、かつ錯誤に基づいたものである場合に認められるが、相手方の主張の変遷などの弁論の全趣旨に照らし、錯誤が肯認できる場合にはその取消しは有効である。 第1 事案の概要:第一審原告(被上告人)は、当初、自ら山林を被告らに売り渡し、後に契約を解除したが受領代金10万円…
自白の撤回の要件(真実に反すること+錯誤)を論じる際の必須判例である。答案上は、両要件を明示した上で、「真実に反する証明があれば錯誤は推定される」という緩和された挙証責任の枠組みを適用する。自白の撤回を認める方向で論証する際の強力な論拠となる。
事件番号: 昭和25(オ)376 / 裁判年月日: 昭和28年10月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の取消しは、自白した事実が真実に反し、かつ、その自白が錯誤に基づいたものであることが証明された場合には、有効に認められる。 第1 事案の概要:上告人は、原審が被上告人による自白の取消しを認め、自白と異なる事実を基礎として裁判を行ったことは、当事者の主張しない事実に基づいたものであり不当…
事件番号: 昭和34(オ)632 / 裁判年月日: 昭和35年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の取消しには、自白が真実に反し、かつ錯誤に基づいたものであることの証明を要するが、自白が真実に反することが証明された場合には、特段の事情がない限り、錯誤によるものと推認される。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、本件不動産の所有権に基づき、上告人(被告)らに対して所有権移転登記の抹…
事件番号: 昭和36(オ)78 / 裁判年月日: 昭和38年1月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法110条の表見代理が成立するためには、相手方が代理権があると信じ、かつ信ずるにつき正当の事由があることを具体的に主張する必要があり、単に代理権があると信じていたという事実の主張のみでは足りない。 第1 事案の概要:上告人らは、被上告人B1がB2を代理して消費貸借契約や抵当権設定、代物弁済予約を…
事件番号: 昭和35(オ)338 / 裁判年月日: 昭和35年7月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白を撤回するためには、相手方の同意がある場合を除き、その自白が真実に反し、かつ錯誤に基づいたものであることを要する。 第1 事案の概要:上告人(原告)が訴訟の過程で行った特定の事実に関する自白につき、後にこれを取り消す旨の意思表示をした。原審は、当該自白の取消しについて、相手方である被上…