判旨
裁判上の自白を撤回するためには、相手方の同意がある場合を除き、その自白が真実に反し、かつ錯誤に基づいたものであることを要する。
問題の所在(論点)
裁判上の自白の撤回(取消し)が認められるための要件、特に相手方の同意がない場合における実質的要件の存否が問題となる。
規範
裁判上の自白には不要証効(民訴法179条)および審判権排除効が認められるため、原則として撤回は許されない。もっとも、①相手方の同意がある場合、または②自白が真実に反し、かつ錯誤に基づくものである場合には、例外的に撤回が認められる。
重要事実
上告人(原告)が訴訟の過程で行った特定の事実に関する自白につき、後にこれを取り消す旨の意思表示をした。原審は、当該自白の取消しについて、相手方である被上告人(被告)らが異議がない(同意している)とはいえないと判断した。また、当該自白が真実に反すること、および錯誤に基づくものであることを裏付ける証拠も存在しなかった。
あてはめ
本件において、被上告人らは自白の取消しに対して異議がないとはいえない状況にあり、相手方の同意という要件を欠いている。また、自白内容が客観的真実に反するものであること、および自白に至る過程に錯誤があったことを示す証拠も認められない。したがって、適法な撤回が認められるための要件(真実に反し、かつ錯誤に基づくこと)をいずれも充足しないといえる。
結論
本件における自白の取消し(撤回)は効力を有しない。
実務上の射程
自白の撤回要件のうち「反真実」と「錯誤」の関係について、判例は両者を累積的要件として求めている点に注意が必要である。実務上、反真実の証明があれば錯誤は推定されるとするのが一般的であるが、答案上は本判決の示す二つの要件を明記した上で、あてはめで証拠の有無を検討すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)738 / 裁判年月日: 昭和35年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】国税徴収法上の公売処分において、見積価額を記載した封書を公売場所に置くべき手続規定に違反があったとしても、その違法は公売処分を当然に無効とする程度の瑕疵とはいえない。 第1 事案の概要:税務署長が行った建物の公売処分において、見積価額が69万9000円と査定されていた。しかし、当時の施行規則23条…
事件番号: 昭和36(オ)576 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の撤回は、自白が真実に反し、かつ錯誤に基づくことが証明された場合に限り許される。ただし、自白が真実に反することの証明があるときは、反証がない限り錯誤によるものと事実上推定される。 第1 事案の概要:被上告人(原告)らは、本件山林の譲渡担保契約の内容に関して一定の自白を行っていた。しかし…
事件番号: 昭和35(オ)694 / 裁判年月日: 昭和37年7月13日 / 結論: 破棄自判
一 小学校教諭が三月二五日に学校長に退職願を提出したが、同日夜撤回を決意し、翌二六日学校長に対し撤回方の尽力を依頼し、翌二七日市教育委員会学校教育課長に撤回を申し入れ、さらに、翌二八日に県教育委員会委員長に対し、退職願取消の申入と題する自己名義の文書に押印し発送した場合は、年度末教員の大異動が差し迫つていたからといつて…
事件番号: 昭和28(オ)1395 / 裁判年月日: 昭和30年1月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の違法性が重大であっても、それが当然無効とされるためには、瑕疵が明白であることを要する。本件のように農地としての性質を一部有する土地の買収処分において、農地性の判断に誤りがあるとしても、直ちに当然無効とはならない。 第1 事案の概要:上告人の所有する土地は、もともと農地であったが、一時的に…
事件番号: 昭和34(オ)632 / 裁判年月日: 昭和35年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の取消しには、自白が真実に反し、かつ錯誤に基づいたものであることの証明を要するが、自白が真実に反することが証明された場合には、特段の事情がない限り、錯誤によるものと推認される。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、本件不動産の所有権に基づき、上告人(被告)らに対して所有権移転登記の抹…