判旨
行政処分の違法性が重大であっても、それが当然無効とされるためには、瑕疵が明白であることを要する。本件のように農地としての性質を一部有する土地の買収処分において、農地性の判断に誤りがあるとしても、直ちに当然無効とはならない。
問題の所在(論点)
農地法等に基づく買収処分において、対象土地が「農地」に該当するか否かの判断に誤りがある場合、その瑕疵は処分の当然無効をもたらすか。
規範
行政処分が当然無効といえるためには、当該処分に重大な瑕疵があるのみならず、その瑕疵が客観的に明白であることを要する。処分の前提となる事実認定に誤りがあるにすぎない場合は、原則として公定力により有効であり、取消訴訟等を通じてのみその効力を争い得る。
重要事実
上告人の所有する土地は、もともと農地であったが、一時的に賃貸され養鯉場として使用されていた。しかし、何時でも容易に水田に復旧し得る状態にあり、現に部分的には稲の植え付けも行われていた。岩手県知事(被上告人)は、当該土地を農地として買収処分(本件処分)を行った。上告人は、本件土地は農地ではないから本件処分は当然無効であると主張し、争った。
あてはめ
本件土地は、養鯉場として利用されていたものの、容易に水田へ復旧可能であり、一部では稲作も行われていたという実態がある。このような事実関係の下では、仮に本件土地を農地として買収したことに違法があるとしても、それは事実認定の評価に関する瑕疵にとどまる。したがって、その瑕疵が重大かつ明白であるとはいえず、公定力を否定してまで当然無効と認めるべき事情はない。
結論
本件買収処分は当然無効ではない。違法を主張するのであれば取消訴訟の手続によるべきであり、無効を前提とした上告人の請求は排斥される。
実務上の射程
事件番号: 昭和38(オ)355 / 裁判年月日: 昭和38年12月19日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第五条第四号の規定による主務大臣の指定する土地に関する件(昭和二三年一月二九日農林省告示第一〇号)は、耕地整理法に基づき耕地整理を施行した土地で宅地としての利用を増進する効果を伴つたもののうち、その施行が都市計画法施行以前に設立された耕地整理組合によつてなされたものに限り、これをもつて自作農創設特別…
行政処分の無効と取消しの区別に関するリーディングケースの一つ。特に農地買収処分において、対象物の属性判定の誤りが「明白性」を欠くと判断される典型例として、答案上では「重大かつ明白な瑕疵」の規範を導く際に活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)385 / 裁判年月日: 昭和32年1月31日 / 結論: 棄却
農地買収計画に対する異議決定および訴願裁決に理由の記載がなくても、右計画に基く農地買収処分は無効ではない。
事件番号: 昭和37(オ)1389 / 裁判年月日: 昭和38年11月1日 / 結論: 棄却
一 農地買収処分の前提としての調査が十分になされたかどうかは、当該処分の有効無効に関係しない(昭和三六年三月七日第三小法廷判決、民集一五巻三号三八一頁)。 二 共有にかかる農地を単独所有であるとして為した買収処分の違法は、その誤認が原審判示のように無理からぬ事情のもとでなされた以上、重大かつ明白な瑕疵ということはできず…
事件番号: 昭和30(オ)920 / 裁判年月日: 昭和31年12月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が当然無効とされるためには、その瑕疵が重大であるだけでなく、かつ客観的に明白であることを要する。本件買収処分については、瑕疵が重大であっても明白とは認められないため、当然無効とはならない。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき、行政庁が本件農地の買収処分を行った。しかし、当該処分…
事件番号: 昭和29(オ)28 / 裁判年月日: 昭和33年6月27日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】農地買収処分において、真実の所有者でない登記簿上の名義人を所有者としてなされた処分は、違法ではあるが当然無効とはならず、取消訴訟の対象となるにすぎない。 第1 事案の概要:所有者BがDに対し本件農地を売却し、Dが有効に所有権を取得した。しかし、登記簿上の名義人は依然としてBのままであった。国は、自…