農地買収計画に対する異議決定および訴願裁決に理由の記載がなくても、右計画に基く農地買収処分は無効ではない。
農地買収計画に対する異議決定および訴願裁決に理由の記載がない場合の農地買収処分の効力
自作農創設特別措置法7条,自作農創設特別措置法9条1項,訴願法14条
判旨
行政処分に違法がある場合でも、その違法が重大かつ明白でない限り、当該処分は当然無効とはならない。訴願の裁決に理由の説示を欠く違法があっても、それは当然無効の原因となる重大な違法には当たらない。
問題の所在(論点)
訴願の裁決において、法律上必要とされる理由の説示を欠くという手続き上の違法がある場合、当該裁決は当然無効となるか。また、その違法が後続の買収処分等の効力にどのように影響するか。
規範
行政行為は、権限を有する行政庁の処分としての外観的形態を具備する限り、仮に違法が存在しても、その違法が「重大かつ明白」である場合を除き、法律上当然無効とはならない。理由付記を欠く要式行為の瑕疵についても、処分としての外観を具備し、後続の訴訟により取消しを求める機会が保障されている限り、直ちに重大な違法とは評価されない。
重要事実
上告人は、農地買収処分等に先立つ異議決定および訴願裁決において、理由の説示が欠如していたと主張した。上告人は、この理由付記の欠如は要式行為としての方式を欠くものであり、当該裁決は当然無効であるから、その違法性を承継する本件買収処分等も当然無効であると主張して、処分の効力を争った。
事件番号: 昭和28(オ)1395 / 裁判年月日: 昭和30年1月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の違法性が重大であっても、それが当然無効とされるためには、瑕疵が明白であることを要する。本件のように農地としての性質を一部有する土地の買収処分において、農地性の判断に誤りがあるとしても、直ちに当然無効とはならない。 第1 事案の概要:上告人の所有する土地は、もともと農地であったが、一時的に…
あてはめ
訴願法14条は裁決に理由を付すべき旨を定めており、理由の説示がないことは違法である。しかし、理由の説示を欠くとしても、行政庁の裁決としての外観的形態は備わっており、いかなる裁決がなされたかは明認できる。また、当事者は出訴期間内に訴訟を提起して当該処分の取消しを求めることが可能であるため、権利救済の道は閉ざされていない。民事訴訟法上も判決の理由不備は破棄事由にとどまり当然無効ではないこととの均衡からも、本件の瑕疵は「重大な違法」には当たらない。したがって、先行する裁決は無効ではなく、これを受ける後続の買収処分等も当然無効とはならない。
結論
本件訴願裁決に理由説示の欠如という違法があっても、それは当然無効とはいえず、これに基づく本件買収処分および売渡処分も法律上当然無効とはならない。
実務上の射程
行政処分の無効事由としての「重大明白説」を再確認した判例である。理由付記の瑕疵が取消事由にとどまるのか無効事由に至るのかを判断する際、処分の外形性や出訴による救済可能性を考慮する枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)920 / 裁判年月日: 昭和31年12月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が当然無効とされるためには、その瑕疵が重大であるだけでなく、かつ客観的に明白であることを要する。本件買収処分については、瑕疵が重大であっても明白とは認められないため、当然無効とはならない。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき、行政庁が本件農地の買収処分を行った。しかし、当該処分…
事件番号: 昭和33(オ)91 / 裁判年月日: 昭和35年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の取消事由にすぎない瑕疵がある場合であっても、その瑕疵が処分を当然無効ならしめるほどの重大かつ明白なものでない限り、当該処分は当然には無効とならない。 第1 事案の概要:上告人は、農地買収処分に以下の無効原因があると主張した。(1)県係員の虚偽指示に基づく買収計画、(2)異議却下時の農地委…
事件番号: 昭和36(オ)4 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
農地の売渡の相手方を誤つた違法があつても、売渡処分を当然無効とはいえない。