農地の売渡の相手方を誤つた違法があつても、売渡処分を当然無効とはいえない。
農地の売渡の相手方を誤つた売渡処分の効力。
旧自作農創設特別措置法16条
判旨
行政処分が当然無効とされるのは、その処分の違法性が重大かつ明白な場合に限られる。処分の相手方の認定に誤りがあっても、当時の状況からその認定に合理的な余地がある場合には、違法は重大かつ明白とはいえず、処分は無効とならない。
問題の所在(論点)
行政処分の瑕疵がどの程度の瑕疵であれば当然無効とされるのか。また、処分の相手方を誤った農地売渡処分の違法は、当然無効をもたらす「重大かつ明白な瑕疵」にあたるか。
規範
行政処分が当然無効となるのは、その処分の違法が重大かつ明白な場合に限られる。
重要事実
旧自作農創設特別措置法に基づき、農地委員会が本件農地をDに売り渡す処分を行った。しかし、実際の耕作者は上告人らであってDではなく、売渡処分の相手方の認定に誤り(違法)があった。もっとも、処分当時においては、農地委員会がDを小作人と認める余地が全くないわけではない諸般の事情が存在していた。上告人らは適法な異議・訴願の手続を執っていなかった。
あてはめ
事件番号: 昭和29(オ)377 / 裁判年月日: 昭和31年2月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に瑕疵がある場合であっても、その瑕疵が重大かつ明白でない限り、当該処分は当然無効とはならず、適法に訴訟等で取り消されない限り有効なものとして取り扱われる。 第1 事案の概要:上告人は、大正10年頃から昭和10年頃まで賃借権に基づき本件土地を耕作していた。自称によれば、昭和10年にDへ転貸し…
行政処分が無効となるためには、違法が重大かつ明白であることを要する。本件では、売渡相手の認定に誤りがあり違法であることは否定できない。しかし、当時の状況下では、農地委員会がDを小作人と認める余地が全くなかったわけではなく、客観的にみて誤認が直ちに明白であったとはいえない。したがって、処分の相手方を誤ったとしても、その瑕疵が「重大かつ明白」なものとは認められない。
結論
本件売渡処分は当然無効とはいえない。上告棄却。
実務上の射程
行政処分の無効事由に関するリーディングケースである「重大明白説」を判示している。答案上、出訴期間を経過した後の取消訴訟等で無効主張がなされる際、瑕疵の「重大性」と「明白性」の二要件を検討する枠組みとして活用する。本判決は、認定の根拠が全くないわけではない場合には「明白性」を否定する傾向にあることを示しており、あてはめの際の参考となる。
事件番号: 昭和44(行ツ)39 / 裁判年月日: 昭和47年3月30日 / 結論: 棄却
農地法八〇条に基づき農地の被買収者が買収農地の売払いを求める訴訟においては、国を被告とすべきである。
事件番号: 昭和38(オ)814 / 裁判年月日: 昭和40年8月31日 / 結論: その他
一旦有資格者に売り渡された農地を他の農地等との交換の目的を実現させるため重ねて第三者に売り渡すがごときことはたとえそれがさきに売渡を受けた者の意思に反しない場合においても、法律上許されないものといわなければならない。
事件番号: 昭和37(オ)1389 / 裁判年月日: 昭和38年11月1日 / 結論: 棄却
一 農地買収処分の前提としての調査が十分になされたかどうかは、当該処分の有効無効に関係しない(昭和三六年三月七日第三小法廷判決、民集一五巻三号三八一頁)。 二 共有にかかる農地を単独所有であるとして為した買収処分の違法は、その誤認が原審判示のように無理からぬ事情のもとでなされた以上、重大かつ明白な瑕疵ということはできず…
事件番号: 昭和30(オ)385 / 裁判年月日: 昭和32年1月31日 / 結論: 棄却
農地買収計画に対する異議決定および訴願裁決に理由の記載がなくても、右計画に基く農地買収処分は無効ではない。