一旦有資格者に売り渡された農地を他の農地等との交換の目的を実現させるため重ねて第三者に売り渡すがごときことはたとえそれがさきに売渡を受けた者の意思に反しない場合においても、法律上許されないものといわなければならない。
農地二重売渡の効力
自作農創設特別措置法20条1項
判旨
自作農創設特別措置法に基づく農地売渡処分は、農地改革という公法上の目的を達成するための処分であり、特定の有資格者への売渡後に他の農地との交換目的で第三者へ二重に売り渡すことは、先行の買受人の同意があっても法律上許されず当然無効である。
問題の所在(論点)
特定の者に対して既に売渡処分がなされた農地について、便宜上、先行買受人の同意を得て第三者に対して重ねて売渡処分を行うことができるか。公法上の処分の目的と二重売渡処分の効力が問題となる。
規範
自作農創設特別措置法に基づく農地売渡処分は、自作農を創設し農業生産力の発展と農村の民主化を図るという公法上の目的を有する。また、売渡を受け得る者は法定の資格要件を具備する者に限定されている。したがって、一旦有資格者に売り渡された農地を、他の農地等との交換目的を実現させる便宜のために重ねて第三者に売り渡すことは、たとえ先行買受人の意思に反しない場合であっても、法の趣旨に照らし法律上許されない。
重要事実
上告人は自作農創設特別措置法に基づき本件農地の売渡を受け対価を完納したが、移転登記は未了であった。その後、上告人と被上告人Bとの間で、上告人が使用していた別の国有地耕作権と本件農地を交換する合意が成立した。農地委員会はこの交換を実現する便宜上、本件農地について再度Bへの売渡計画を樹立し、知事は上告人への既往の売渡処分を取り消さないまま、Bに対して二重の売渡処分を行い、Bへの保存登記がなされた。
事件番号: 昭和44(行ツ)39 / 裁判年月日: 昭和47年3月30日 / 結論: 棄却
農地法八〇条に基づき農地の被買収者が買収農地の売払いを求める訴訟においては、国を被告とすべきである。
あてはめ
本件売渡処分は、公法上の農地改革の一環として、法定の資格を有する上告人に対して既に行われている。これに対し、後になされたBへの売渡処分は、単に私法上の交換契約の目的を達するための方便として行われたものである。同法が農業生産力の発展等の公法上の目的を有し、買受人の資格を厳格に定めていることに鑑みれば、このような便宜的・二重的な処分は法の許容しないところである。したがって、上告人の同意があるという事情があっても、Bへの処分が適法化される余地はない。
結論
被上告人Bに対する本件農地売渡処分は当然に無効である。Bは無効な処分に基づく登記を抹消すべきであり、知事は上告人に対し所有権移転登記手続をなすべき義務を負う。
実務上の射程
行政処分の目的が公法的な特定の政策目的に拘束される場合、当事者の合意や私法上の都合によって処分の内容や対象を恣意的に変更することはできない(処分の拘束性・公法性)を示す事例として活用できる。特に「二重処分」の無効を判断する際の有力な論拠となる。
事件番号: 昭和36(オ)4 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
農地の売渡の相手方を誤つた違法があつても、売渡処分を当然無効とはいえない。
事件番号: 昭和32(オ)577 / 裁判年月日: 昭和36年1月25日 / 結論: 棄却
一 昭和二五年政令第二八八号第二条第一項本文かつこ内の規定が、自作農創設特別措置法によつて売渡を受けた農地等を自ら耕作することをやめた場合等について、農業に精進する見込のある者がない場合に、その農地を政府に譲渡せしめることにしているのは憲法第二九条第三項に違反しない。 二 昭和二五年政令第二八八号施行令第一四条で定める…
事件番号: 昭和50(行ツ)23 / 裁判年月日: 昭和50年6月27日 / 結論: 棄却
農地法八〇条に基づき農地の売払いを受けられる場合には、当該農地の旧所有者は、行政事件訴訟法三六条により、当該農地の売渡処分の無効確認を求める原告適格を有しない。
事件番号: 昭和40(行ツ)111 / 裁判年月日: 昭和42年3月31日 / 結論: 破棄差戻
農地の買収処分無効確認の訴と所有権移転登記抹消登記手続請求の訴との併合訴訟において、前者の訴につき、第一審が取得時効の完成を認めて訴を不適法として却下したのに対し、原審が時効の完成を否定し第一審判決を取り消して、請求を認容したのは、民訴法第三八八条の必要的差戻しの規定に違背するものというべきであるが、後者の訴についての…