農地法八〇条に基づき農地の売払いを受けられる場合には、当該農地の旧所有者は、行政事件訴訟法三六条により、当該農地の売渡処分の無効確認を求める原告適格を有しない。
農地法八〇条に基づき農地の売払いを受けられる場合と当該農地の旧所有者の売渡処分の無効確認を求める原告適格
農地法80条,行政事件訴訟法36条
判旨
行政処分が無効であることを前提とする現在の法律関係に関する訴えにより目的を達することができる場合には、行政事件訴訟法36条の補充性の要件を満たさず、無効確認の訴えの原告適格を欠く。
問題の所在(論点)
行政処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴えを提起できる場合に、行政事件訴訟法36条にいう「無効等の確認を求めるにつき法律上の利益」が認められるか。
規範
行政事件訴訟法36条は、無効確認の訴えの原告適格について、当該処分に続く処分により損害を受けるおそれがある者のほか「その他当該処分の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者」と規定している。この「法律上の利益を有する者」とは、当該処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴え(民事訴訟又は公法上の当事者訴訟)によって、その目的を達することができない場合に限られる(無効確認訴訟の補充性)。
重要事実
上告人らは、農地法等に基づく国による土地の売渡処分につき、その無効を主張した。上告人らは、当該無効を前提として、国に対し本件各土地についての売払いの申請に対する承諾の意思表示(売払い契約の成立確認等)を求める訴えを提起していた。判決文からは具体的な土地の所在や売渡しの背景等の詳細は不明である。
事件番号: 昭和44(行ツ)39 / 裁判年月日: 昭和47年3月30日 / 結論: 棄却
農地法八〇条に基づき農地の被買収者が買収農地の売払いを求める訴訟においては、国を被告とすべきである。
あてはめ
本件において、上告人らは国に対し、本件各土地の売払申請に対する承諾の意思表示を求める訴えを提起することが可能である。この訴えは現在の法律関係に関する訴えに該当し、これにより処分の無効を前提とした直接的な紛争解決を図ることができる。したがって、わざわざ行政処分自体の無効確認を求める必要性はなく、他のより適切な訴訟形態によって「目的を達することができるもの」と評価される。
結論
本件無効確認の訴えは、行政事件訴訟法36条所定の原告適格を欠くものとして却下されるべきである。
実務上の射程
無効確認訴訟の「補充性」を明示した重要判例である。答案上は、いきなり無効確認訴訟を選択するのではなく、より直截的な救済手段(争点訴訟や当事者訴訟等)の有無を検討し、それらが可能であれば36条の原告適格を否定する論理として用いる。
事件番号: 昭和36(オ)4 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
農地の売渡の相手方を誤つた違法があつても、売渡処分を当然無効とはいえない。
事件番号: 昭和38(オ)814 / 裁判年月日: 昭和40年8月31日 / 結論: その他
一旦有資格者に売り渡された農地を他の農地等との交換の目的を実現させるため重ねて第三者に売り渡すがごときことはたとえそれがさきに売渡を受けた者の意思に反しない場合においても、法律上許されないものといわなければならない。
事件番号: 昭和37(オ)1403 / 裁判年月日: 昭和39年10月20日 / 結論: 破棄自判
自作農創設特別措置法により買収農地の売渡を受けた者が当該農地の所有権を時効取得したときは、右農地の被買収者は、その買収処分の無効確認を求める訴の利益を有しない。
事件番号: 昭和40(行ツ)111 / 裁判年月日: 昭和42年3月31日 / 結論: 破棄差戻
農地の買収処分無効確認の訴と所有権移転登記抹消登記手続請求の訴との併合訴訟において、前者の訴につき、第一審が取得時効の完成を認めて訴を不適法として却下したのに対し、原審が時効の完成を否定し第一審判決を取り消して、請求を認容したのは、民訴法第三八八条の必要的差戻しの規定に違背するものというべきであるが、後者の訴についての…