一 昭和二五年政令第二八八号第二条第一項本文かつこ内の規定が、自作農創設特別措置法によつて売渡を受けた農地等を自ら耕作することをやめた場合等について、農業に精進する見込のある者がない場合に、その農地を政府に譲渡せしめることにしているのは憲法第二九条第三項に違反しない。 二 昭和二五年政令第二八八号施行令第一四条で定める強制譲渡の対価は、憲法第二九条第三項に違反しない。 三 昭和二五年政令第二八八号第三条第三項による政府に対する支払金は憲法第二九条第三項に違反しない。 四 昭和二五年政令第二八八号第二条第一項第三号が、自作農創設特別措置法によつて売渡を受けた農地をその他の農地と区別し、自ら耕作することをやめた場合に、保有面積以下の小作地であつても強制的に譲渡せしめることは、憲法第一四条に違反しない。
一 昭和二五年政令第二八八号第二条第一項本文中かつこ内の規定と憲法第二九条第三項。 二 昭和二五年政令第二八八号施行令第一四条で定める農地の強制譲渡の対価と憲法第二九条第三項。 三 昭和二五年政令第二八八号第三条第三項による政府に対する支払金と憲法第二九条第三項。 四 自作農創設特別措置法により売渡を受けた農地について保有面積以内の小作地であつても強制譲渡せしめる昭和二五年政令第二八八号第二条第一項第三号と憲法第一四条。
昭和25年政令288号(自作農創設特別措置法及び農地調整法の適用を受けるべき土地の譲渡に関する政令)2条1項本文3号,昭和25年政令288号(自作農創設特別措置法及び農地調整法の適用を受けるべき土地の譲渡に関する政令)5条,昭和25年政令288号(自作農創設特別措置法及び農地調整法の適用を受けるべき土地の譲渡に関する政令)3条3項,憲法29条,憲法29条3項,憲法14条,同政令施行令(昭和25年政令317号)14条
判旨
自作農創設特別措置法に基づき政府から売り渡された農地を、受領者が耕作を廃止した等の理由で政府が強制的に譲り受けることは、自作農創設という公共の目的を維持するための買い戻し的性格を有し、憲法29条に違反しない。
問題の所在(論点)
自創法に基づき売り渡された農地の受領者が耕作を廃止した場合に、政府が強制的に当該農地を買い戻す規定が、憲法29条が保障する財産権の侵害および「正当な補償」の欠如に当たらないか。また、かかる特定の農地のみを対象とすることが憲法14条の平等原則に反しないか。
規範
自作農創設の目的(耕作者の地位安定、生産力発展等)に照らし、売渡を受けた者が耕作を廃止した場合には、政府が当該農地を一時的に譲り受けて適切な他者に再売渡することは「公共の必要」に基づく合理的な制限である。また、その際の対価(補償)については、もともと政府から安価に売り渡された際と同等の価格による先買権が予定されている場合、当初の売渡価格を返還すれば足り、これに加えて農地自作の年数に応じた価格騰貴利益の一定保有を認める制度であれば、憲法29条3項の「正当な補償」に反しない。
事件番号: 昭和34(オ)655 / 裁判年月日: 昭和35年3月25日 / 結論: 棄却
人権に関する世界宣言に違反するという上告理由は法令違背を理由とするものではない。
重要事実
上告人は、自作農創設特別措置法(自創法)16条に基づき政府から農地の売渡を受けたが、後にその農地の耕作をやめた。そのため、昭和25年政令288号に基づき、国が上告人から当該農地を強制的に譲り受ける(買い戻す)処分がなされた。上告人は、この強制譲渡が公共の必要性を欠き(憲法29条1項・2項違反)、また対価が不当に低額である(同3項違反)などと主張して争った。
あてはめ
本件の強制譲渡は、自作農創設の目的を失った農地を再度適切な耕作者に配分するためのものであり、「公共の必要」が認められる。対価については、上告人は当初から自創法による先買権の制約がある条件で安価に売渡を受けていたのであるから、当初の対価(賃貸価格の40倍)を上回る額(賃貸価格の280倍)が支払われる以上、不当とはいえない。また、自作期間に応じた納付金制度は、保有期間に応じた利益還元を認める趣旨であり合理的である。平等原則についても、自作農創設という特別の目的に基づく措置であるため、他の一般農地と異なる取扱いをしても不当な差別には当たらない。
結論
本件農地の強制譲渡規定および補償規定は、憲法29条および14条に違反しない。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
自作農創設という極めて特殊かつ政策的な文脈における財産権の制約と補償を論じた判例である。現代の損失補償における「正当な補償」の一般論として直接引用する際は、本件が「当初から公的制約が付着した財産の買い戻し的性質」を有していたという特殊性に留意が必要である。
事件番号: 昭和29(オ)126 / 裁判年月日: 昭和34年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地の買収処分は、憲法14条、29条、98条に違反せず、また公序良俗に反して無効となることもない。 第1 事案の概要:上告人に対し、自作農創設特別措置法3条に基づき農地買収処分がなされた。上告人は、同法が憲法98条、14条、29条等に違反し無効であること、また、当該買収…
事件番号: 昭和34(オ)114 / 裁判年月日: 昭和35年12月2日 / 結論: 棄却
一 自作農創設維持の事業により創設された自作地でその旨の登記を経由したものであつても、当然に遡及買収から除外されるものではない。 二 偽造の委任状に基づき作成された公正証書が債務名義の場合には請求異議の訴によりその執行力の排除を争うことができる。
事件番号: 昭和38(オ)1308 / 裁判年月日: 昭和40年7月16日 / 結論: 棄却
農地の譲渡について農地調整法による知事の認可のあつたことは、自作農創設特別措置法第六条の二によつて右農地に対する遡及買収をすることを妨げるものではない。
事件番号: 昭和26(オ)162 / 裁判年月日: 昭和29年1月22日 / 結論: 破棄自判
一 行政処分の無効確認を求める訴は、処分行政庁を被告として提起することができる。 二 農地所有者が死亡し家督相続によつて農地の所有権が相続人に移転した場合において、登記簿上の所有者たる被相続人宛の買収令書が相続人の親族の者に交付せられ同人がこれを右相続人に送付したときは、相続人が買収令書を返送しても、右買収令書による農…