一 自作農創設維持の事業により創設された自作地でその旨の登記を経由したものであつても、当然に遡及買収から除外されるものではない。 二 偽造の委任状に基づき作成された公正証書が債務名義の場合には請求異議の訴によりその執行力の排除を争うことができる。
一 自作農創設維持の事業により創設された自作地でその旨の登記を経由したものを遡及買収の対象とすることの許否 二 公正証書が偽造の委任状に基づき作成された場合と請求異議の訴
自作農創設特別措置法6条の2,民訴法545条,民訴法559条3,民訴法560条,民訴法522条
判旨
自作農創設維持の事業により創設され登記を経由した自作地であっても、所有者が自作せず小作に付していた等の事情があれば、自作農創設特別措置法に基づく遡及買収は適法であり、当然無効とはならない。また、このような遡及買収は憲法39条に違反せず、権利の濫用にも当たらない。
問題の所在(論点)
1. 自作地として登記された土地に対し、自作農創設特別措置法に基づく遡及買収を行うことは、同法上または信義則上許されるか(重大明白な瑕疵として当然無効になるか)。 2. 遡及買収の制度が憲法39条の遡及処罰禁止の原則に抵触するか。
規範
自作農創設維持の事業により創設され、その旨の登記を経由した自作地であっても、法律上当然に遡及買収から除外されるものではない。当該買収処分の適否は、当該土地の利用実態や制度の趣旨に照らし、遡及買収を相当とするかどうかの判断資料に基づいて決定される。行政処分が「当然無効」となるためには、その処分に重大かつ明白な瑕疵があることを要する。
重要事実
本件農地は、自作農創設維持の事業により創設された自作地として登記を受けていた土地であった。しかし、所有者は当該土地を自ら耕作(自作)することなく、実際には第三者に小作として貸し付けていた。行政庁は、当該土地を自作農創設特別措置法に基づき遡及買収する処分を行った。これに対し、上告人側は、既に自作地として登記済みの土地を遡及買収することは違法かつ当然無効であり、憲法39条違反や権利の濫用にも当たると主張して争った。
事件番号: 昭和39(行ツ)21 / 裁判年月日: 昭和39年10月13日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第五条第四号により買収除外の指定を受けた区域内にある小作地であつても、これを同法第三条第一項第二号にいう在村地主の保有小作面積に算入することは許される。
あてはめ
本件土地は形式上は創設自作地として登記されていたものの、実態としては所有者が自作せず小作に付していた。自作農創設の趣旨に照らせば、このような実態にある土地を遡及買収することは、買収の相当性を欠くものとはいえない。したがって、当該処分に重大明白な瑕疵があるとは認められず、当然無効とは解されない。また、遡及買収が憲法39条に違反しないことは判例の確立したところであり、本件における申請等の経緯に照らしても、権利の濫用と認めるべき事情は存在しない。
結論
本件遡及買収処分は適法であり、当然無効ではない。また、憲法39条違反および権利の濫用の主張も採用できないため、上告を棄却する。
実務上の射程
行政処分の効力を争う際、「重大明白な瑕疵」の有無を判断するにあたって、形式的な権利外観(登記)よりも実体的目的(自作の実態)を重視した判断枠組みとして活用できる。また、農地改革という特殊な法的背景下での遡及的制限が憲法39条の対象外であることを再確認する際のリファレンスとなる。
事件番号: 昭和34(オ)655 / 裁判年月日: 昭和35年3月25日 / 結論: 棄却
人権に関する世界宣言に違反するという上告理由は法令違背を理由とするものではない。
事件番号: 昭和28(オ)1266 / 裁判年月日: 昭和33年4月30日 / 結論: 棄却
農地所有権の移転後、移転登記未経由の間に登記簿上の所有名義人を所有者としてなされた農地買収処分は、当然無効と解すべきではない
事件番号: 昭和38(オ)355 / 裁判年月日: 昭和38年12月19日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第五条第四号の規定による主務大臣の指定する土地に関する件(昭和二三年一月二九日農林省告示第一〇号)は、耕地整理法に基づき耕地整理を施行した土地で宅地としての利用を増進する効果を伴つたもののうち、その施行が都市計画法施行以前に設立された耕地整理組合によつてなされたものに限り、これをもつて自作農創設特別…
事件番号: 昭和31(オ)845 / 裁判年月日: 昭和32年7月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分は真実の所有者に対して行うべきであるが、登記簿上の所有者に対し確定した買収処分は、それが登記名義人に対してなされたという一事をもって当然無効とはならない。また、自作農創設特別措置法28条にいう「自作をやめようとするとき」とは、必ずしもその旨の意思表示を要するものではない。 第1 事案…