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所有権に基づく登記抹消請求訴訟において、現地の所在に争がある場合に、登記簿上の地番に該当する土地についての所有権喪失を確定しないで請求を排斥するのは理由不備の違法があるとされた事例
判旨
所有権に基づく登記抹消請求に対し、被告が売買による所有権取得を主張する場合、裁判所は売買の対象となった土地が公簿上の請求対象地と同一であるかを確定しなければならない。売買対象地の位置が公簿上の土地と一致するかを確認せずに請求を棄却することは、理由不備の違法にあたる。
問題の所在(論点)
所有権に基づく抹消登記請求に対し、被告が売買を原因とする所有権取得の抗弁を主張した場合において、売買対象地の同一性が争点となっているとき、裁判所はいかなる事実を確定すべきか。
規範
不動産の所有権移転登記抹消請求を排斥するためには、登記名義人(被告)が請求対象である公簿上の土地を有効に取得した事実を確定しなければならない。売買契約の対象となった現況の土地と、登記上の対象地(公簿上の土地)の位置が一致するか否かに争いがある場合、裁判所は売買対象地が果して公簿上の当該土地に該当するかを特定・判断する要がある。
重要事実
上告人(原告)は、自己所有の公簿上の土地(c番のd)につき無断で被上告人(被告)名義の登記がなされたとして、その抹消を求めた。被上告人は、同地を含む四筆を上告人から買い受けたと主張したが、記録上、上告人が主張する土地の位置と被上告人が買い受けたと主張する土地の位置は異なっていた。原審は、被上告人が主張する範囲の土地について売買契約の成立を認定したが、その土地が公簿上の「c番のd」と一致するかを確定しないまま、上告人の抹消請求を棄却した。
あてはめ
本件において、上告人は公簿上の「c番のd」の土地の所有権を主張している。これに対し、被上告人の抗弁を認めて請求を棄却するには、被上告人が取得した土地が公簿上の「c番のd」と一致することを説示しなければならない。しかし、原判決は被上告人が一方的に主張する範囲の土地について売買を認定したに過ぎず、それが登記簿上の土地と合致するか否かを検討していない。これは判断の前提となる事実の確定を欠くものであり、理由不備といえる。
事件番号: 昭和38(オ)710 / 裁判年月日: 昭和41年2月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産譲渡の合意の成立が認められない以上、その合意に至る経緯としての周辺事実(賃借権の存在等)について個別に判断を示さなくとも、理由不備や判断遺脱の違法は存しない。 第1 事案の概要:上告人(原告)は、訴外Fとの間で、Fが国から本件土地の払下げを受けることを停止条件として、本件土地を上告人に譲渡す…
結論
公簿上の土地と売買対象地の同一性を確定せずに請求を棄却した原判決には理由不備の違法があるため、当該部分を破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
物権的請求権に基づく登記抹消請求訴訟において、被告の取得原因(売買等)が争われる際の事実認定の在り方を示す。特に「公簿上の土地」と「現況の土地(契約対象)」の不一致が争われる事案では、契約の成立だけでなく、その客体と請求対象地の同一性を認定することが不可欠であるという点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和38(オ)350 / 裁判年月日: 昭和41年4月12日 / 結論: その他
物件の所有者であることを理由とし、その物件についての所有権移転登記の抹消を求める訴訟において、被告が、抗弁として、原告が甲に対し代物弁済により右物件の所有権を移転した旨を主張したところ、原告から甲への所有権移転を認容したうえ、さらに、原告は甲から右物件を買い戻したが、後にこれを乙に対し譲渡担保として移転し、結局、原告は…
事件番号: 昭和32(オ)748 / 裁判年月日: 昭和35年2月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の所有権取得に関する当事者双方の主張事実が証拠上認められない場合、公簿(登記簿等)の記載をもって一応真実の権利状態に適合するものと推定し、事実認定を行うことは適法である。 第1 事案の概要:本件家屋の所有権取得をめぐり、原告・被告双方が自己の所有権を主張したが、原審において双方の主張する取得原…
事件番号: 昭和38(オ)164 / 裁判年月日: 昭和39年5月26日 / 結論: 棄却
登記義務者の意思に基づかない登記であつても、現在の実体的権利関係に符合するものであるかぎり、右意思に基づかないとして、当該登記の抹消登記請求をすることは理由がない。
事件番号: 昭和34(オ)70 / 裁判年月日: 昭和35年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】登記申請手続に瑕疵がある登記であっても、それが現在の実体的な権利関係に合致するものである限り、当該登記は有効であり、登記義務者はその抹消を請求することができない。 第1 事案の概要:本件において、上告人と被上告人の間で売買が行われ、それに基づき所有権移転登記がなされた。上告人は、当該登記の申請手続…