判旨
登記申請手続に瑕疵がある登記であっても、それが現在の実体的な権利関係に合致するものである限り、当該登記は有効であり、登記義務者はその抹消を請求することができない。
問題の所在(論点)
登記申請手続に瑕疵がある場合であっても、その登記が実体的な権利関係に合致しているとき、当該登記の効力は認められるか。また、登記義務者はその抹消を請求できるか。
規範
登記制度の本旨は不動産に関する権利の現状を公示することにある。したがって、登記申請手続に不備や瑕疵があったとしても、既に登記が了され、かつその内容が現在の真実な権利状態と符合するものであるならば、当該登記は実体関係を公示するものとして有効と解すべきである。
重要事実
本件において、上告人と被上告人の間で売買が行われ、それに基づき所有権移転登記がなされた。上告人は、当該登記の申請手続において、申請書類等に瑕疵があった(判決文からは具体的な瑕疵の内容は不明)として、売買行為の無効を主張するとともに、瑕疵ある登記の抹消を求めた。しかし、原審においては売買行為は有効であると認定されていた。
あてはめ
本件登記は、申請手続において瑕疵があるものの、原審により売買契約の有効性が認められており、被上告人が実体法上の所有権を有していることが確定している。そうであれば、本件登記によって公示されている内容は「現在の真実な権利状態に符合するもの」といえる。また、一般の偽造文書による全く無権利者への登記のような場合とは性質を異にする。したがって、実体関係を伴う本件登記は有効なものとして維持されるべきである。
結論
本件登記は有効であり、登記義務者である上告人は本件登記の抹消を請求することはできない。
実務上の射程
事件番号: 昭和32(オ)20 / 裁判年月日: 昭和34年7月14日 / 結論: 棄却
登記申請が登記義務者の意思に基いてなされたものであり、よつてなされた登記が実体的権利関係に合致するときは、たとえ右申請の際に添付された印鑑証明書の日附が変造されたものであつても、なお、登記の効力を妨げないというべきである。
実体関係に合致する「実体なき登記(中間省略登記等)」や「手続に瑕疵ある登記」の有効性を肯定する際の根拠として用いる。物権変動があった事実が認められる以上、手続的瑕疵のみをもって抹消を認めるのは信義則や訴訟経済に反するという実務上の判断基準を示すものである。
事件番号: 昭和28(オ)111 / 裁判年月日: 昭和31年7月27日 / 結論: 破棄差戻
不動産の譲渡人から与えられた代理権に基き、譲渡人の死亡後同人の代理人名義の申請によつてなされた移転登記は、それが現在の真実な権利状態に符合するものである限り、対抗力を有し、譲渡人の相続人は譲受人に対し、その抹消を請求することはできない。
事件番号: 昭和34(オ)470 / 裁判年月日: 昭和35年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未登記不動産の所有者がこれを譲渡した後でも、登記を備えない限り譲渡人は完全な無権利者とはならない。したがって、譲渡人名義でなされた保存登記およびそれを前提とする仮差押登記は、対抗関係の法理により有効である。 第1 事案の概要:訴外Dは、自己の所有する本件建物を未登記のまま上告人Aに売り渡した。その…
事件番号: 昭和45(オ)890 / 裁判年月日: 昭和46年2月25日 / 結論: 棄却
抵当権の実行のための競売開始決定が所有者に対して送達されないかしがあつても、競落許可決定が確定すれば、右かしを理由として同決定の無効を主張することは許されない。
事件番号: 昭和33(オ)1128 / 裁判年月日: 昭和36年11月24日 / 結論: 棄却
甲が乙から宅地を買受けその旨の所有権取得登記を経由したのち、乙の債務不履行を原因として右売買契約が解除された場合には、甲は乙に対し右登記の抹消登記手続を求めることができる。