判旨
建物の所有権取得に関する当事者双方の主張事実が証拠上認められない場合、公簿(登記簿等)の記載をもって一応真実の権利状態に適合するものと推定し、事実認定を行うことは適法である。
問題の所在(論点)
権利の帰属が争われている事案において、当事者の主張する具体的取得事実が認められない場合に、公簿の記載に基づいて権利関係を推定し認定することが許されるか。
規範
特定の権利の帰属について当事者双方の主張する事実がいずれも立証不十分で認めがたい場合には、公務員が職務上作成した公簿の記載を事実上の推定の根拠として、特段の事情がない限り、当該記載が真実の権利状態を反映しているものと判断して差し支えない。
重要事実
本件家屋の所有権取得をめぐり、原告・被告双方が自己の所有権を主張したが、原審において双方の主張する取得原因事実はいずれも認めがたいと判断された。そこで原審は、公簿(不動産登記簿等)に記載された権利関係を基礎として、その記載内容が一応真実の権利状態に適合するものと推定して事実認定を行った。
あてはめ
本件では家屋の所有権取得に関する双方の立証が不十分であり、事実認定が困難な状況にある。このような状況下において、公的機関が作成・管理する公簿は一定の客観的信憑性を有する。したがって、他に特段の反証がない限り、公簿の記載を「一応真実の権利状態に適合するもの」として事実認定の資料に供することは、合理的な証拠の取捨判断の範囲内といえる。
結論
公簿の記載をもって権利関係を推定した原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
民事訴訟における事実認定において、直接的な証拠が乏しい場合の「事実上の推定」の活用事例として重要。特に不動産の所有権確認訴訟等において、登記等の公的記載が有する証拠力を補完的に認める際の論拠となる。
事件番号: 昭和38(オ)164 / 裁判年月日: 昭和39年5月26日 / 結論: 棄却
登記義務者の意思に基づかない登記であつても、現在の実体的権利関係に符合するものであるかぎり、右意思に基づかないとして、当該登記の抹消登記請求をすることは理由がない。
事件番号: 昭和35(オ)198 / 裁判年月日: 昭和38年10月15日 / 結論: 棄却
登記簿上の現所有者名義人は、前所有名義人から不動産所有権を取得したと主張する場合には、前所有名義人に対し、登記の推定力を援用し得ない。
事件番号: 昭和35(オ)234 / 裁判年月日: 昭和37年10月5日 / 結論: その他
甲乙丙三棟の建物を所有する債務者が、未登記の甲建物の所有権保存登記をなすべく司法書士に委任したところ、甲建物を主たる建物、乙丙建物を付属建物と表示する登記がなされ、次いで、債権者の手により甲乙丙建物を目的物とする抵当権設定登記が経由されたのに対し、抵当権設定契約の不存在を理由として右抵当権設定登記の抹消登記手続を請求す…
事件番号: 昭和30(オ)724 / 裁判年月日: 昭和32年1月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の登記原因が虚偽であっても、その登記が現在の真実の権利関係と合致するものであるならば、当該登記は有効である。 第1 事案の概要:被上告人B1は、本件家屋の所有権を家督相続により適法に取得した。一方で、本件家屋についてはB2を権利者とする所有権取得登記がなされていたが、その登記原因とされた贈与…
事件番号: 昭和32(オ)20 / 裁判年月日: 昭和34年7月14日 / 結論: 棄却
登記申請が登記義務者の意思に基いてなされたものであり、よつてなされた登記が実体的権利関係に合致するときは、たとえ右申請の際に添付された印鑑証明書の日附が変造されたものであつても、なお、登記の効力を妨げないというべきである。