農地の権利移転についての知事の許可書の内容が不当に改ざんされたからといつて、一たん発生した許可処分の効力に何らの消長をもきたさない。
農地の権利移転についての知事の許可書が改ざんされた場合と許可処分の効力
農地法3条
判旨
行政庁による農地移動の許可書の内容の一部が不当に改ざんされたとしても、一旦有効に発生した許可自体の効力は、当該改ざん行為によって当然に失われるものではない。
問題の所在(論点)
行政庁による許可がなされた後、その許可を証する書面(許可書)の一部が不当に改ざんされた場合、一旦発生した許可の効力が失われるか。
規範
行政庁によって適法に与えられた許可は、その後に許可書という書面の一部に不当な改ざんが加えられたとしても、その改ざんが許可の成立要件や本質的内容を遡及的に消滅させる事由とならない限り、一旦発生した許可としての公法上の効力には何ら影響を及ぼさない。
重要事実
上告人の所有地につき、被上告人らが共同相続人の持分放棄等を経て単独所有権や権利移動を主張した事案。土地の移動に関して農地法上の許可書が作成されたが、その内容の一部が不当に改ざんされていた。上告人は、許可書が改ざんされた以上、農地移動の許可はその効力を失うべきであり、また改ざんに関与した者がその許可の有効性を主張することは信義則や禁反言の法理に反すると主張して、許可の効力を争った。
事件番号: 昭和38(オ)431 / 裁判年月日: 昭和42年3月14日 / 結論: 破棄自判
一 不動産登記用紙の閉鎖の回復手続を求める訴は、右閉鎖が違法にされた場合でも、許されない。 二 行政事件訴訟特例法のもとにおける行政処分の無効確認判決は、第三者に対しても効力を有する。
あてはめ
本件における農地移動の許可は、行政手続を経て適法に成立したものである。許可書という書面は許可の事実を証明する証拠資料としての性格を有するが、許可そのものの効力は行政庁の意思表示によって生じる。したがって、許可書の一部が事後的に不当に改ざんされたとしても、それは許可の成立過程や内容そのものを変容させるものではなく、発生済みの許可の効力自体を左右するものではない。また、改ざん行為への加担という事実があったとしても、それによって直ちに許可の効力を否定し、信義則等により排斥することはできない。
結論
許可書の一部が改ざんされたとしても、発生済みの農地移動の許可自体の効力には何ら消長を来さない。
実務上の射程
行政処分の効力と、処分を証する書面の真正性を区別する射程を持つ。行政法上の許可が必要な契約(農地法3条等)において、書面に不備や改ざんがあっても、許可の事実に疑いがない限り私法上の権利移行を認める余地を示す判決である。
事件番号: 昭和48(オ)792 / 裁判年月日: 昭和50年10月29日 / 結論: 棄却
本件農地買収処分には、買収令書の交付に代わる公告手続に瑕疵があつたが、所論の買収令書の交付によつて右瑕疵が補正されたので、右買収処分は有効である。
事件番号: 昭和26(オ)840 / 裁判年月日: 昭和29年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記の記載が取得原因において事実と異なっていたとしても、現在の権利関係に合致している限り、その登記の抹消を請求することはできない。 第1 事案の概要:亡Dは、隠居前に本件不動産を被上告人に対して贈与した。しかし、本件不動産に関する登記上の取得原因は、この贈与という事実とは異なる内容で記載され…
事件番号: 昭和34(オ)632 / 裁判年月日: 昭和35年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の取消しには、自白が真実に反し、かつ錯誤に基づいたものであることの証明を要するが、自白が真実に反することが証明された場合には、特段の事情がない限り、錯誤によるものと推認される。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、本件不動産の所有権に基づき、上告人(被告)らに対して所有権移転登記の抹…
事件番号: 昭和37(オ)396 / 裁判年月日: 昭和40年10月12日 / 結論: 棄却
第一審判決主文に民訴法第一九四条にいう明白な誤謬がある場合、控訴裁判所が控訴棄却の判決をするにあたり判決の理由中に理由を示し主文において右誤謬を更正しても違法ではない。