本件農地買収処分には、買収令書の交付に代わる公告手続に瑕疵があつたが、所論の買収令書の交付によつて右瑕疵が補正されたので、右買収処分は有効である。
買収令書の交付に代わる公告の瑕疵が公告後約二五年後にされた買収令書の交付によつて補正された事例
農地法施行法2条1項1号,自作農創設特別措置法9条但書
判旨
行政処分の手続に瑕疵があったとしても、その後に本来の手続が適正に行われる等して手続の目的が達せられた場合には、当該瑕疵は補正され、処分は有効となる。
問題の所在(論点)
行政処分の成立過程において公告手続に瑕疵がある場合、その後に買収令書が直接交付されることによって、当該瑕疵は補正され、処分の効力は有効となるか。
規範
行政処分の効力を争う場面において、当初の手続に不備(瑕疵)があったとしても、その後に当該不備を補完する行為(買収令書の直接交付等)がなされ、処分の相手方の権利利益の保護という手続の趣旨が実質的に全うされたと認められる場合には、当該瑕疵は補正され、処分の効力は維持される。
重要事実
本件農地買収処分において、本来行われるべき買収令書の交付に代わる公告手続に瑕疵が存在した。しかし、後に処分の相手方に対して直接買収令書の交付が行われた。この後続の行為が、当初の公告手続の瑕疵を治癒(補正)するものとして、処分の有効性が争われた。
事件番号: 昭和38(オ)1332 / 裁判年月日: 昭和40年7月22日 / 結論: 棄却
農地の権利移転についての知事の許可書の内容が不当に改ざんされたからといつて、一たん発生した許可処分の効力に何らの消長をもきたさない。
あてはめ
本件では、公告手続に不備があったものの、その後、上告人に対して買収令書が直接交付されている。この交付行為により、上告人は買収処分の内容を確定的に知ることが可能となり、手続的保障が実質的に図られたといえる。したがって、公告手続の瑕疵は令書の交付によって補正されたと評価するのが相当である。
結論
本件農地買収処分は有効であり、公告手続の瑕疵を理由とする上告人の請求は認められない。
実務上の射程
行政手続の瑕疵の治癒(補正)に関するリーディングケースの一つ。答案上では、手続的瑕疵を理由に処分取消を主張する相手方に対し、行政側が瑕疵の治癒を反論として主張する際の枠組みとして活用できる。ただし、治癒が認められるのは、相手方の防御権や知る権利が実質的に保障された場合に限定される点に注意を要する。
事件番号: 昭和49(オ)1202 / 裁判年月日: 昭和50年12月26日 / 結論: 棄却
土地の買主が、所有権移転登記をうけなかつたが申請手続の過誤により隣地につき所有権移転登記がされたためであり、土地の引渡はうけその使用をつづけた等判示の事実関係のもとにおいては、買受代金の支払について所有権移転登記手続との同時履行を主張することは信義則上許されない。
事件番号: 昭和39(オ)1052 / 裁判年月日: 昭和41年1月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金員借入の委任を受けた代理人が不動産を売却した事案において、本人に直接確認せずとも表見代理の「正当な理由」が認められ得ること、及び借入の手段を一任された場合は処分権限も含むと解されることを示した。 第1 事案の概要:上告人(本人)は、訴外Dに対し、本件田を担保として金員を借り入れることを委任し、そ…
事件番号: 昭和36(オ)65 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の先行段階である買収計画に対する異議申立の却下決定通知が不適法であっても、その後の買収処分が当然無効になるわけではなく、取消原因にとどまる。また、受領拒絶は令書の交付ができない場合に該当し、公告をもって代えることができる。 第1 事案の概要:上告人は、未墾地買収計画に対する異議申立の却下決…
事件番号: 昭和34(オ)70 / 裁判年月日: 昭和35年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】登記申請手続に瑕疵がある登記であっても、それが現在の実体的な権利関係に合致するものである限り、当該登記は有効であり、登記義務者はその抹消を請求することができない。 第1 事案の概要:本件において、上告人と被上告人の間で売買が行われ、それに基づき所有権移転登記がなされた。上告人は、当該登記の申請手続…