判旨
判決に影響を及ぼすべき違法があるか否かは、認定の基礎となった証拠の一部に瑕疵があったとしても、他の証拠によって事実認定を維持できる場合には否定される。
問題の所在(論点)
事実認定の基礎とされた複数の証拠のうち、一部の証拠の評価や採否に誤りがあった場合、直ちに「判決に影響を及ぼすべき違法」として破棄事由となるか。
規範
事実認定の基礎となった証拠の一部に不適切な点があったとしても、判決に示された他の証拠によって当該事実認定を十分に肯認し得る場合には、その瑕疵は判決の結果に影響を及ぼすべき違法(民事訴訟法旧401条、現312条等参照)とはならない。
重要事実
原審において事実認定の基礎とされた証拠のうち、乙第二号証および第三号証について、上告人は「単に市長へ届け出られた書類であることを認めたに過ぎない」として、その証拠価値を争った。一方で、原審は他にも乙第一号証や乙第四ないし第七号証(各陳述記載)を証拠として挙げていた。
あてはめ
仮に上告人が主張するように、乙第二、第三号証が単なる届出書類であることを認めたに過ぎないものであったとしても、原判決が挙げている他の証拠(乙第一、第四ないし第七号証)によれば、認定された事実は十分に導き出すことが可能である。したがって、一部の証拠に関する評価が不十分であったとしても、結論を左右するものではないと評価される。
結論
一部の証拠の採否に疑義があっても、他の証拠により事実認定を肯認できる以上、判決に影響を及ぼすべき違法は認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
民事訴訟における「判決に影響を及ぼすべき違法の有無」を判断する際の判断枠組みとして、証拠の重要度と事実認定の連続性を検討する場面で活用できる。実務上は、理由不備や証拠法則違反を主張する際の反論、あるいは判決の安定性を肯定する根拠として機能する。
事件番号: 昭和31(オ)787 / 裁判年月日: 昭和33年8月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼさない事実認定の過誤や、傍論にすぎない不要な説示の違法を主張する上告理由は、原判決の破棄事由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が認定した事実のうち「上告人が訴外Bのために家屋を移築すべき宅地の借受交渉を被上告人に対して行った」とする点に事実誤認があると主張した。ま…
事件番号: 昭和32(テ)22 / 裁判年月日: 昭和32年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する上告であっても、その実質が原審の事実認定を非難するにすぎない場合は、特別上告の適法な理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人が憲法違反を理由として特別上告を提起したが、その主張の内容は、原判決が行った事実認定の手続きや結果に対する不服申し立てであった。 第2 問題の所在(論点…
事件番号: 昭和30(オ)934 / 裁判年月日: 昭和32年11月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない事実を前提とした価格算定の妥当性について、裁判所が判断を示さなかったとしても、理由不備の違法はない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和25年当時における係争宅地の市場価格について、昭和27年に行われた第三者(DおよびE)間の売買価格を基準にすべきであると主張した。しかし、記録…
事件番号: 昭和28(オ)128 / 裁判年月日: 昭和28年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書に証拠番号の誤記があったとしても、それが単なる表記上の誤りであることが明白な場合には、上告理由とはならない。 第1 事案の概要:原判決において、配当期日呼出状が送達された事実を認定する際、その証拠として「乙第三号証の一乃至三」と記載された。しかし、実際には当該事実は「乙第三号証の一乃至五」に…