判旨
当事者が主張していない事実を前提とした価格算定の妥当性について、裁判所が判断を示さなかったとしても、理由不備の違法はない。
問題の所在(論点)
当事者が明確に主張していない事実や評価基準について、裁判所が判決理由中で判断を示さないことが、理由不備の違法にあたるか。
規範
当事者が記録上主張していない事実や基準については、裁判所が判決においてそれらを斟酌しなかったとしても、理由不備等の違法(民事訴訟法旧401条、現312条2項6号参照)は認められない。
重要事実
上告人は、昭和25年当時における係争宅地の市場価格について、昭和27年に行われた第三者(DおよびE)間の売買価格を基準にすべきであると主張した。しかし、記録上、上告人が原審においてそのような具体的な主張を行っていた形跡は認められなかった。原審は、当該主張を斟酌せずに価格を認定した。
あてはめ
本件において、上告人は昭和27年の売買価格を基準とすべき旨を主張する。しかし、記録によれば上告人が従来そのような主張を行っていた事迹は顕れていない。したがって、裁判所にはその点について判断を示す義務はなく、これを斟酌せずに価格認定を行った原審の判断に、理由不備の違法があるとはいえない。
結論
原判決に理由不備の違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
民事訴訟における弁論主義の観点から、裁判所が判断すべき対象は当事者が提出した主張・事実に限られることを再確認するものである。答案上は、理由不備の違法を論じる際の消極例として、当事者の主張の有無を確認する文脈で活用できる。
事件番号: 昭和29(オ)939 / 裁判年月日: 昭和30年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民事訴訟法394条(現行312条1項・2項)所定の上告理由に該当しない事実認定の是非を争う主張は、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)が行った証拠の採否および事実認定に不服があるとして上告を申し立てた。判決文からは具体的な紛争の背景や事実関係の詳細については不明…
事件番号: 昭和32(テ)22 / 裁判年月日: 昭和32年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する上告であっても、その実質が原審の事実認定を非難するにすぎない場合は、特別上告の適法な理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人が憲法違反を理由として特別上告を提起したが、その主張の内容は、原判決が行った事実認定の手続きや結果に対する不服申し立てであった。 第2 問題の所在(論点…
事件番号: 昭和32(オ)958 / 裁判年月日: 昭和33年5月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が証拠を排斥するに際してその理由を個別に説示する必要はなく、また控訴審が第1審判決の理由を引用することも適法である。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)が特定の証人の証言やその他の証拠を採用しなかったことにつき、理由の不備がある旨を主張して上告した。また、控訴審が第1審判決の理由を引…
事件番号: 昭和38(オ)710 / 裁判年月日: 昭和41年2月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産譲渡の合意の成立が認められない以上、その合意に至る経緯としての周辺事実(賃借権の存在等)について個別に判断を示さなくとも、理由不備や判断遺脱の違法は存しない。 第1 事案の概要:上告人(原告)は、訴外Fとの間で、Fが国から本件土地の払下げを受けることを停止条件として、本件土地を上告人に譲渡す…
事件番号: 昭和30(オ)854 / 裁判年月日: 昭和31年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼすべき違法があるか否かは、認定の基礎となった証拠の一部に瑕疵があったとしても、他の証拠によって事実認定を維持できる場合には否定される。 第1 事案の概要:原審において事実認定の基礎とされた証拠のうち、乙第二号証および第三号証について、上告人は「単に市長へ届け出られた書類であることを…