判旨
裁判所が証拠を排斥するに際してその理由を個別に説示する必要はなく、また控訴審が第1審判決の理由を引用することも適法である。
問題の所在(論点)
裁判所が証拠を排斥する際にその理由を詳細に説明する義務があるか。また、控訴審が第1審判決の理由を引用することは許されるか(判決の理由不備の有無)。
規範
裁判所が証拠を排斥するにあたり、その理由を一々説示することを要しない。また、控訴審が第1審判決理由の記載を引用することは、民事訴訟法上の規定に基づき適法に認められる。
重要事実
上告人は、原審(控訴審)が特定の証人の証言やその他の証拠を採用しなかったことにつき、理由の不備がある旨を主張して上告した。また、控訴審が第1審判決の理由を引用した点についても違法であると主張した。
あてはめ
最高裁の判例によれば、証拠の採否は裁判所の専権に属し、排斥する理由を逐一説明する必要はない。本件において、原審が所論の証人証言等を採用しなかったことには何ら違法はない。また、当時の民事訴訟法391条(現行法281条3項、305条等参照)に基づき、控訴審が第1審判決の理由を引用することも正当な手続である。
結論
本件判示に理由不備の違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
判決書の理由記載の程度に関する実務上の指針。証拠の取捨選択における自由心証主義の範囲と、判決の簡素化・迅速化を目的とした第1審理由引用の適法性を確認する際に用いる。
事件番号: 昭和25(オ)129 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は、証拠の採否について自由な心証を有するものであり、採用しなかった証拠についてその理由を判決書に記載する必要はない。 第1 事案の概要:上告人は、原審が特定の証人の証言を採用しなかったにもかかわらず、その理由を説明しなかったことは違法であると主張して上告した。また、訴訟物の価格の算定、事実認…
事件番号: 昭和36(オ)207 / 裁判年月日: 昭和36年9月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審判決の理由記載において、第一審判決を引用することは民事訴訟法の規定に基づき適法であり、控訴審の独立した裁判を妨げるものではない。 第1 事案の概要:上告人は、控訴審判決が理由の記載において第一審判決を引用したことについて、それが控訴審の不羈独立の裁判を妨げるものであると主張して上告を申し立て…
事件番号: 昭和33(オ)258 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審が行った証拠の取捨選択および事実認定が適法である限り、上告審においてこれと異なる事実を主張して原判決を非難することは、上告理由にならない。 第1 事案の概要:上告人らは、原審が認定した売買の事実について、証拠の取捨選択や事実認定に誤りがあるとして、原判決の違法を主張し、上告を申し立てた。なお、…
事件番号: 昭和32(オ)1079 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が同一の証言の一部を採用し他を排斥する場合、判文上その区分が了知できれば足り、逐一内容を列記して明示したり排斥の理由を示したりする必要はない。 第1 事案の概要:上告人(合資会社A1およびA2株式会社)は、土地建物の所有権取得に関する原審の事実認定につき、証拠の取捨選択に不備があるとして上告…
事件番号: 昭和28(オ)482 / 裁判年月日: 昭和28年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が申し出た証拠が唯一の証拠でない場合、裁判所が証拠申出の許否を明示的に決定せずに結審したとしても、それは申請を却下した趣旨と認められ、手続上の違法はない。 第1 事案の概要:上告人は、原審において証拠の申し出を行ったが、原裁判所は特にその証拠申出の許否を決定することなく結審した。これに対し上…