判旨
当事者が申し出た証拠が唯一の証拠でない場合、裁判所が証拠申出の許否を明示的に決定せずに結審したとしても、それは申請を却下した趣旨と認められ、手続上の違法はない。
問題の所在(論点)
当事者が申し出た証拠につき、裁判所が採用するか否かの決定(証拠決定)を明示的に行わないまま結審することが、民事訴訟手続上の違法(訴訟手続の違背)となるか。特に、証拠申出の却下決定を欠く結審の適法性が問題となる。
規範
当事者の申し出た証拠が唯一の証拠方法でない場合、特に証拠申出の許否を決定することなく結審したときは、その申請を却下した趣旨と認められる。したがって、証拠採用の有無について特段の決定をせず審理を終結させることは、民事訴訟法上の手続として適法である。
重要事実
上告人は、原審において証拠の申し出を行ったが、原裁判所は特にその証拠申出の許否を決定することなく結審した。これに対し上告人は、かかる裁判所の措置が訴訟手続の違背にあたると主張して上告を提起した。なお、当該証拠が当該事実を証明するための「唯一の証拠」であったかについては、判決文からは不明であるが、判旨は唯一の証拠でないことを前提としている。
あてはめ
本件において、上告人が申し出た証拠は唯一の証拠方法ではない。裁判所が証拠の許否を明示せずに結審した事実は、黙示的に当該証拠の申請を却下した趣旨であると解される。また、上告人が指摘する特定の書証(甲6、7号)についても、原判決が事実認定の証拠資料として採用しなかったことが明らかである。したがって、手続上の違法があるとはいえない。
結論
裁判所が証拠決定を行わずに結審しても、それが唯一の証拠でない限り、申請却下の趣旨と解されるため適法である。上告棄却。
実務上の射程
事件番号: 昭和31(オ)185 / 裁判年月日: 昭和32年5月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由に原審で主張していない事実を含めることはできず、また、証拠の取捨選択に基づく事実認定は原審の専権に属する。 第1 事案の概要:上告人は、原審において主張していなかった事実を前提とした主張を上告理由として掲げた。また、本件取引物件の価額に関する証拠(人証)について、原審が認定した事実を誤認で…
実務上、裁判所には証拠採用に関する広範な裁量があり、不要と判断した証拠を黙示的に却下して結審することが許容されることを示す。司法試験においては、釈明権の行使や証拠調べの必要性が争点となる場面で、裁判所の訴訟指揮の適法性を支える補助的な論拠として活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)958 / 裁判年月日: 昭和33年5月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が証拠を排斥するに際してその理由を個別に説示する必要はなく、また控訴審が第1審判決の理由を引用することも適法である。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)が特定の証人の証言やその他の証拠を採用しなかったことにつき、理由の不備がある旨を主張して上告した。また、控訴審が第1審判決の理由を引…
事件番号: 昭和32(オ)542 / 裁判年月日: 昭和35年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において当事者が第一審の弁論の結果を陳述したときは、第一審の訴訟資料はすべて控訴審に顕出されたものとみなされ、また、唯一の証拠方法でない証拠申出に対し許否を決定せず結審することは違法ではない。 第1 事案の概要:上告人は、控訴審において当事者双方が第一審の口頭弁論の結果を陳述したが、それは事…
事件番号: 昭和25(オ)129 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は、証拠の採否について自由な心証を有するものであり、採用しなかった証拠についてその理由を判決書に記載する必要はない。 第1 事案の概要:上告人は、原審が特定の証人の証言を採用しなかったにもかかわらず、その理由を説明しなかったことは違法であると主張して上告した。また、訴訟物の価格の算定、事実認…