判旨
控訴審において当事者が第一審の弁論の結果を陳述したときは、第一審の訴訟資料はすべて控訴審に顕出されたものとみなされ、また、唯一の証拠方法でない証拠申出に対し許否を決定せず結審することは違法ではない。
問題の所在(論点)
1. 控訴審において「第一審の弁論の結果の陳述」がなされた場合、第一審の証拠資料は当然に控訴審の基礎となるか。 2. 証拠申出に対する許否の裁判を行わずに結審することは、民事訴訟法上許されるか。
規範
1. 控訴審における第一審口頭弁論結果の陳述は、第一審で提出された一切の訴訟資料を控訴審に顕出させる効力を有する。 2. 申し出られた証拠が唯一の証拠方法でない限り、裁判所がその許否を明示的に決定することなく弁論を終結しても、審理不尽等の違法とはならない(証拠採用の自由裁量)。
重要事実
上告人は、控訴審において当事者双方が第一審の口頭弁論の結果を陳述したが、それは事実上の主張のみであり、証拠関係については陳述しておらず、書証の原本も顕出されていないため、証拠によらない裁判であると主張した。また、上告人が申し立てた文書取寄申請について、原審が許否の裁判をせずに弁論を終結したことも違法であるとして上告した。
あてはめ
1. 控訴審において一審の弁論結果を陳述した事実に争いはない。この陳述により、一審で提出されたすべての訴訟資料は控訴審に顕出されたものと解すべきであり、原本の再提出等は不要である。 2. 上告人が申し出た文書取寄申請は、記録に照らして「唯一の証拠方法」には当たらない。また、原審は当該申請を取調の必要がないとして黙示的に排斥したと認められる。唯一の証拠でない以上、明示的な却下決定を待たずに結審しても裁量の範囲内であり、違法とはいえない。
結論
上告棄却。控訴審において一審の弁論結果が陳述されれば一審の証拠資料は控訴審の審判の基礎となり、また唯一でない証拠方法の黙示的排斥は適法である。
事件番号: 昭和35(オ)131 / 裁判年月日: 昭和38年1月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者の申し出た証拠が唯一の証拠でない限り、その採否は事実審の自由裁量に属し、特定の鑑定の申出を採用しなくても採証法則違背や審理不尽の違法はない。 第1 事案の概要:上告人は、訴外Dを代理人として訴外Eの債務を担保するために、被上告人との間で本件土地建物について代物弁済予約等の合意をしたが、後にこ…
実務上の射程
控訴審の続審的性格(民訴法297条・298条1項)を確認する基本判例である。司法試験においては、控訴審での主張立証の範囲や、裁判所の証拠採否の裁量を論じる際の根拠となる。特に「唯一の証拠方法」にあたらない場合の証拠決定の要否に関する論証で有用。
事件番号: 昭和28(オ)482 / 裁判年月日: 昭和28年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が申し出た証拠が唯一の証拠でない場合、裁判所が証拠申出の許否を明示的に決定せずに結審したとしても、それは申請を却下した趣旨と認められ、手続上の違法はない。 第1 事案の概要:上告人は、原審において証拠の申し出を行ったが、原裁判所は特にその証拠申出の許否を決定することなく結審した。これに対し上…
事件番号: 昭和30(オ)934 / 裁判年月日: 昭和32年11月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない事実を前提とした価格算定の妥当性について、裁判所が判断を示さなかったとしても、理由不備の違法はない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和25年当時における係争宅地の市場価格について、昭和27年に行われた第三者(DおよびE)間の売買価格を基準にすべきであると主張した。しかし、記録…
事件番号: 昭和32(オ)748 / 裁判年月日: 昭和35年2月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の所有権取得に関する当事者双方の主張事実が証拠上認められない場合、公簿(登記簿等)の記載をもって一応真実の権利状態に適合するものと推定し、事実認定を行うことは適法である。 第1 事案の概要:本件家屋の所有権取得をめぐり、原告・被告双方が自己の所有権を主張したが、原審において双方の主張する取得原…
事件番号: 昭和25(オ)51 / 裁判年月日: 昭和28年12月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が援用していない証言であっても、相手方が自己の利益に援用した証拠であれば、裁判所がこれを反対事実の認定資料に供することは違法ではない。 第1 事案の概要:上告人は、原審において証人Eの証言を援用していないにもかかわらず、原判決が「上告人が当該証言を援用した」と事実摘示し、かつ当該証言を上告人…