判旨
当事者が援用していない証言であっても、相手方が自己の利益に援用した証拠であれば、裁判所がこれを反対事実の認定資料に供することは違法ではない。
問題の所在(論点)
当事者一方が援用していない証言を、裁判所が当該当事者に不利益な事実認定の資料として用いることができるか(証拠共通の原則の成否)。
規範
証拠共通の原則に基づき、一旦適法に証拠調べが行われた証拠は、挙証者のみならず、相手方が援用した場合も含め、いずれの当事者の有利または不利な事実の認定にも用いることができる。
重要事実
上告人は、原審において証人Eの証言を援用していないにもかかわらず、原判決が「上告人が当該証言を援用した」と事実摘示し、かつ当該証言を上告人の主張に反する事実認定の資料としたことは違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件証人Eの証言は、上告人の相手方である被上告人が自己の利益のために援用したものである。裁判所が、適法に証拠調べがなされ、かつ相手方によって援用された証拠を、挙証者(あるいは援用していない当事者)に不利な事実認定の資料に加えたとしても、証拠共通の原則に照らし適法である。したがって、原判決の事実摘示に一部誤りがあったとしても、結論に影響を及ぼすものではない。
結論
相手方が援用した証言を、それ以外の当事者に不利な事実認定の資料に供することは違法ではなく、上告は棄却される。
実務上の射程
民事訴訟における証拠共通の原則を確認した判例である。答案上は、当事者が特定の証拠から自分に不利益な事実が認定されることを争う場面で、当該証拠が適法に証拠調べを経ている限り、裁判所は自由心証によりいずれの当事者に有利・不利な事実認定にも用いうる旨を論じる際に活用する。
事件番号: 昭和35(オ)1081 / 裁判年月日: 昭和38年3月26日 / 結論: 棄却
民訴法第一八六条所定の申立には、個々の攻撃または防禦方法である主張または抗弁は含まれない。
事件番号: 昭和32(オ)542 / 裁判年月日: 昭和35年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において当事者が第一審の弁論の結果を陳述したときは、第一審の訴訟資料はすべて控訴審に顕出されたものとみなされ、また、唯一の証拠方法でない証拠申出に対し許否を決定せず結審することは違法ではない。 第1 事案の概要:上告人は、控訴審において当事者双方が第一審の口頭弁論の結果を陳述したが、それは事…
事件番号: 昭和31(オ)445 / 裁判年月日: 昭和31年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定において、相反する当事者の陳述や証人の証言から、いずれを信用して採用し、いずれを排斥するかは、特段の事情がない限り裁判所の自由な心証に委ねられる。 第1 事案の概要:上告人は、消費貸借の弁済期に関する認定、および被上告人による弁済の提供の事実認定に際し、原審が特定の陳述を信用し、他を排斥し…
事件番号: 昭和28(オ)533 / 裁判年月日: 昭和31年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が明示的に事実を主張していない場合であっても、証拠の申出や弁論の全趣旨から、その事実を主張する意思が認められるのであれば、裁判所は当該事実を認定して判決の基礎とすることができる。 第1 事案の概要:上告人が被上告人に対し請求を行った事案において、被上告人は解除権の留保およびこれに基づく契約解…
事件番号: 昭和33(オ)258 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審が行った証拠の取捨選択および事実認定が適法である限り、上告審においてこれと異なる事実を主張して原判決を非難することは、上告理由にならない。 第1 事案の概要:上告人らは、原審が認定した売買の事実について、証拠の取捨選択や事実認定に誤りがあるとして、原判決の違法を主張し、上告を申し立てた。なお、…