民訴法第一八六条所定の申立には、個々の攻撃または防禦方法である主張または抗弁は含まれない。
民訴法第一八六条所定の申立の意義。
民訴法186条
判旨
間接事実にすぎない事実については、裁判所は当事者の主張の有無に拘束されることなく、証拠に基づき自由な心証によってこれを認定することができる。
問題の所在(論点)
当事者が主張していない間接事実を、裁判所が判決の基礎として認定することは、弁論主義の適用範囲との関係で許されるか。
規範
弁論主義が妥当するのは、主要事実に限られる。これに対し、主要事実の存否を推認させるにすぎない「間接事実」については、当事者による主張を待たず、裁判所が証拠に基づいて自由に認定することが可能である。
重要事実
上告人は、原審が認定した特定の事実(被上告人に所有権を取得せしめる目的をもってなされた事実等)について、当事者が主張していないにもかかわらず裁判所が認定したことは、申立の範囲を超えた判決(当時の民訴法186条違反)である、あるいは主張がない事実を認定した違法があるとして上告した。
あてはめ
事件番号: 昭和33(オ)257 / 裁判年月日: 昭和35年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の拘束力は主要事実にのみ及び、主要事実の存否を推認させるにすぎない間接事実については、当事者間に争いがなくても裁判所はこれに拘束されない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人が1か月分の利息相当額を損害金として受領した旨の自白があるにもかかわらず、原審がこれに反する事実を確定したこと…
論旨が指摘する事実は、個々の攻撃・防御の方法を構成する主要事実に当たるものではなく、単なる間接事実にすぎない。したがって、裁判所は、当事者がその事実を明示的に主張しているか否かに拘束されず、提出された証拠等に基づき、その自由な裁量による証拠の取捨判断を通じて当該事実を認定しても、弁論主義には反しない。
結論
間接事実にすぎない事由は当事者の主張に拘束されず認定できるため、原審の認定に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
弁論主義の第一命題(主張責任)が主要事実にのみ適用されることを明確にした基本判例である。答案上は、ある事実が主要事実か間接事実かを区別した上で、間接事実であれば「主張がなくても認定できる」とする論拠として用いる。
事件番号: 昭和38(オ)350 / 裁判年月日: 昭和41年4月12日 / 結論: その他
物件の所有者であることを理由とし、その物件についての所有権移転登記の抹消を求める訴訟において、被告が、抗弁として、原告が甲に対し代物弁済により右物件の所有権を移転した旨を主張したところ、原告から甲への所有権移転を認容したうえ、さらに、原告は甲から右物件を買い戻したが、後にこれを乙に対し譲渡担保として移転し、結局、原告は…
事件番号: 昭和31(オ)165 / 裁判年月日: 昭和35年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁論主義が適用されるのは主要事実に限られ、間接事実については裁判所が当事者の主張に拘束されず、証拠に基づいて当事者の主張と異なる事実を認定しても違法ではない。 第1 事案の概要:上告人は、原審が当事者の主張と異なる事実を認定した点に違法があると主張して上告した。具体的には、原判決が認定した事実の一…
事件番号: 昭和31(オ)1033 / 裁判年月日: 昭和33年4月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白が成立するのは主要事実に限られ、間接事実に関する自白には拘束力が生じない。また、自由心証主義の下では、間接事実が存在したとしても、裁判所が直ちに主要事実を認定すべき義務を負うものではない。 第1 事案の概要:上告人は、Dから上告人への贈与契約が成立したと主張したが、原審はその主張を排斥…