判旨
裁判所は、証拠の採否について自由な心証を有するものであり、採用しなかった証拠についてその理由を判決書に記載する必要はない。
問題の所在(論点)
裁判所が証拠を採用しなかった場合、判決においてその理由を説明する義務を負うか。証拠の不採用理由の不記載が、判決の違法事由となるかが問題となる。
規範
裁判所は、当事者が申し出た証拠のうち、どの証拠を採用し、どの証拠を排斥するかについて自由な裁量を有する。また、判決において、採用しなかった証拠についてその理由を具体的に説明することを要しない。
重要事実
上告人は、原審が特定の証人の証言を採用しなかったにもかかわらず、その理由を説明しなかったことは違法であると主張して上告した。また、訴訟物の価格の算定、事実認定の不当性、および調書の記載の不正確さについてもあわせて主張した。
あてはめ
本件において、原審はある証人の証言を採用しなかったが、裁判所には証拠の採否に関する自由な判断権が認められている。採用しなかった証拠について逐一理由を説明する義務はないため、理由の記載が欠けていることをもって直ちに違法と断ずることはできない。その他の主張(訴訟物価格、事実認定、調書の記載等)についても、適法な上告理由に当たらないか、または違法を認めるべき資料がない。
結論
裁判所が採用しなかった証拠について理由を説明しなかったとしても、その措置に違法はない。したがって、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
民事訴訟における自由心証主義の帰結として、証拠の採否およびその理由記載の要否に関する裁判所の広範な裁量を認めたものである。答案上は、理由不備(民訴法312条2項6号)の成否が問題となる場面で、裁判所が必要な証拠を調べた上で特定の証拠を採用しなかったとしても、その理由を付す必要はないことを示す根拠として活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)958 / 裁判年月日: 昭和33年5月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が証拠を排斥するに際してその理由を個別に説示する必要はなく、また控訴審が第1審判決の理由を引用することも適法である。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)が特定の証人の証言やその他の証拠を採用しなかったことにつき、理由の不備がある旨を主張して上告した。また、控訴審が第1審判決の理由を引…
事件番号: 昭和22(オ)27 / 裁判年月日: 昭和23年2月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が証拠を自由な心証によって取捨選択することは、採証法則に反しない限り適法であり、どの証拠を採用し、どの証拠を排斥したかについて、その理由を逐一判決に記載する必要はない。 第1 事案の概要:上告人は、不動産の売買契約又は売買予約の成立を主張し、これに沿う証人らの証言を提出した。しかし、原審はこ…
事件番号: 昭和33(オ)258 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審が行った証拠の取捨選択および事実認定が適法である限り、上告審においてこれと異なる事実を主張して原判決を非難することは、上告理由にならない。 第1 事案の概要:上告人らは、原審が認定した売買の事実について、証拠の取捨選択や事実認定に誤りがあるとして、原判決の違法を主張し、上告を申し立てた。なお、…
事件番号: 昭和27(オ)850 / 裁判年月日: 昭和29年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件上告は、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の定める上告理由のいずれにも該当せず、法令の解釈に関する重要な主張も含まないため、棄却されるべきである。 第1 事案の概要:上告人は、原判決を不服として上告を申し立てたが、提出された論旨の内容が上記特例法に定める要件を満たしているか…
事件番号: 昭和27(オ)1125 / 裁判年月日: 昭和29年2月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が「民事上告事件の審判の特例に関する法律」所定の事由に該当せず、かつ法令の解釈に関する重要な主張を含まない場合、上告は棄却される。 第1 事案の概要:上告人が最高裁判所に対し上告を提起したが、その上告理由(論旨)が、当時の「民事上告事件の審判の特例に関する法律」1条1号から3号までのいずれ…