判旨
上告理由に原審で主張していない事実を含めることはできず、また、証拠の取捨選択に基づく事実認定は原審の専権に属する。
問題の所在(論点)
上告審において、原審で主張しなかった事実を主張の前提とすることの可否、および原審の証拠取捨選択に基づく事実認定を上告理由で争うことの可否が問題となる。
規範
上告審において、原審で主張しなかった事実を前提とした主張を行うことは認められない。また、事実の認定および証拠の取捨選択は、原則として事実審である原審の専権に属する事項であり、重大な事実誤認等の特段の事情がない限り、上告審での非難の対象とはならない。
重要事実
上告人は、原審において主張していなかった事実を前提とした主張を上告理由として掲げた。また、本件取引物件の価額に関する証拠(人証)について、原審が認定した事実を誤認であるとして争い、鑑定の申請がなされなかった点等についても不服を申し立てたが、実際には上告人自身が原審で鑑定の申請を撤回(拠棄)していた。
あてはめ
上告人の主張(第一点)は、原審で主張された形跡のない事実を前提とするものであり、不適法な主張である。また、証拠の取捨選択(第二点)については、提出された人証から直ちに上告人が主張する価額を認定すべき必然性はなく、原審がその自由な心証により事実を認定したことは適法である。さらに、鑑定未実施についても、上告人が自ら申請を撤回している以上、手続上の違法を問うことはできない。
結論
本件上告は理由がないため棄却される。原審の事実認定および証拠判断に違法はない。
実務上の射程
民事訴訟における適時提出の原則や、上告審が事後審・法律審であるという構造を示す。特に、原審で主張・立証を尽くすべき責任(当事者主義・弁論主義)を強調する文脈で、上告理由の制限を論じる際に参照される。
事件番号: 昭和28(オ)482 / 裁判年月日: 昭和28年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が申し出た証拠が唯一の証拠でない場合、裁判所が証拠申出の許否を明示的に決定せずに結審したとしても、それは申請を却下した趣旨と認められ、手続上の違法はない。 第1 事案の概要:上告人は、原審において証拠の申し出を行ったが、原裁判所は特にその証拠申出の許否を決定することなく結審した。これに対し上…
事件番号: 昭和33(オ)258 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審が行った証拠の取捨選択および事実認定が適法である限り、上告審においてこれと異なる事実を主張して原判決を非難することは、上告理由にならない。 第1 事案の概要:上告人らは、原審が認定した売買の事実について、証拠の取捨選択や事実認定に誤りがあるとして、原判決の違法を主張し、上告を申し立てた。なお、…
事件番号: 昭和33(オ)860 / 裁判年月日: 昭和35年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】請求の主要な争点である事実が認められない場合には、その余の事実関係を確定することなく直ちに請求を棄却することができる。裁判所が主要事実の存否につき証拠を検討し、これを認められないと判断した過程に自由心証の逸脱がなければ、判決に違法はない。 第1 事案の概要:上告人は被上告人に対し、本件家屋を買い受…
事件番号: 昭和31(オ)470 / 裁判年月日: 昭和32年5月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠の取捨判断およびそれに基づく事実認定は、特段の事情がない限り、原審の専権に属する事項である。本件においても、提出された書証が証人尋問の結果を覆すに足りる反証とならないとした原審の判断に違法はない。 第1 事案の概要:上告人は、本件公正証書の作成前に甲号各証を被上告人に交付したと主張し、それを裏…