判旨
請求の主要な争点である事実が認められない場合には、その余の事実関係を確定することなく直ちに請求を棄却することができる。裁判所が主要事実の存否につき証拠を検討し、これを認められないと判断した過程に自由心証の逸脱がなければ、判決に違法はない。
問題の所在(論点)
請求の前提となる主要な事実(本件では売買契約の成立)が認められない場合に、裁判所は他の付随的事実を確定せずに請求を棄却できるか。また、原審で主張していない新たな事実を上告理由とできるか。
規範
訴訟における主要な争点(本件では売買の事実)が認められない場合、その余の事実関係を確定するまでもなく請求を排斥できる。事実認定については、提出された証拠を対比検討した結果、証拠の取捨選択および事実の認定が自由心証の範囲内にある限り、適法な判断とされる。
重要事実
上告人は被上告人に対し、本件家屋を買い受けたとして所有権に基づく主張(あるいはそれに基づく請求)を行った。原審は、上告人が提出・援用した証拠を検討したが、結局、主張に係る売買の事実は認められないと結論付けた。そのため、原審はその他の事実関係を積極的に認定することなく、直ちに上告人の請求を棄却した。上告人は、譲渡担保に関する主張も行ったが、これは原審で主張されていなかった事実であった。
あてはめ
本件において、請求の成否を決する主要な争点は、上告人が被上告人から家屋を買い受けたか否かにある。原審は証拠の対比検討により、この買受けの事実を否定した。主要な発生原因である買受けの事実が認められない以上、他の細部的な事実関係を確定させる必要はなく、直ちに請求を棄却した判断は合理的である。また、譲渡担保の主張は原審でなされておらず、審級の利益を考慮すれば採用の余地はない。事実認定についても、自由心証の範囲を逸脱した点は認められない。
結論
主要な争点である買受けの事実が認められない以上、他の事実を認定せずになされた請求棄却の判断は正当であり、本件上告は棄却される。
事件番号: 昭和25(オ)251 / 裁判年月日: 昭和28年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が人証と書証を総合して事実認定を行うことは、個々の証拠が直接的に特定の事実を証明するに足りない場合であっても、自由心証主義の範囲内として許容される。 第1 事案の概要:上告人は、本件売買契約について証書の作成や代金の受取証が存在しないことを指摘。原審が認定の根拠とした人証は被上告会社の利害関…
実務上の射程
民事訴訟における「争点整理」と「証拠調べ」の効率的な運用を認める射程を持つ。主要事実(権利発生原因)が否定される場合に、抗弁や細部事実の認定を省略できる実務上の根拠となる。ただし、理由不備とならないよう、どの事実が「主要な争点」であるかの特定が肝要である。
事件番号: 昭和33(オ)26 / 裁判年月日: 昭和34年7月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】売買の予約の成立を認めるためには、その前提となる事実について証拠に基づき合理的に認定する必要があり、供述内容が予約ではなく本契約の成立を指している場合には、予約の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)が上告人(被告)から土地200坪を単価140円で購入したと主張し、売買一…
事件番号: 昭和34(オ)868 / 裁判年月日: 昭和35年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の所有権の帰属に関し、家賃取立の実績等の事実が認められる場合であっても、他の証拠により導かれる所有権の推定を直ちに覆すに足りるものではない。 第1 事案の概要:本件建物の所有権の帰属をめぐり、上告人(控訴人)は、自らが家賃の取立を行ってきた事実などを主張し、証拠を提出して自らの所有を主張した。…
事件番号: 昭和28(オ)533 / 裁判年月日: 昭和31年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が明示的に事実を主張していない場合であっても、証拠の申出や弁論の全趣旨から、その事実を主張する意思が認められるのであれば、裁判所は当該事実を認定して判決の基礎とすることができる。 第1 事案の概要:上告人が被上告人に対し請求を行った事案において、被上告人は解除権の留保およびこれに基づく契約解…
事件番号: 昭和34(オ)1210 / 裁判年月日: 昭和36年10月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が当事者の主張した日時や形式とは異なる態様で契約の成立を認定しても、それが当事者の主張の範囲内における事実の評価にすぎない場合には、弁論主義に反しない。 第1 事案の概要:被上告人(建築主)が、上告人(施工者)に対し、建物建築請負契約に基づき建物の引渡し等を求めた事案。被上告人は「昭和24年…