判旨
裁判所が人証と書証を総合して事実認定を行うことは、個々の証拠が直接的に特定の事実を証明するに足りない場合であっても、自由心証主義の範囲内として許容される。
問題の所在(論点)
直接的な証拠(受取証等)が欠けている、あるいは個々の証拠が単独では中間的な事実(仮払等)を証明するに過ぎない場合に、人証と書証を総合して主要事実(代金授受)を認定することが、実験則違反や審理不尽に該当するか。
規範
事実の認定は、裁判所が口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果を自由な心証によって判断することに委ねられている(自由心証主義)。個々の証拠が単独では不十分、あるいは特定の事実(代金支払等)を直接証明するものでない場合であっても、他の人証や書証とあわせて総合的に評価し、事実の存在を推認することは、実験則に反しない限り適法である。
重要事実
上告人は、本件売買契約について証書の作成や代金の受取証が存在しないことを指摘。原審が認定の根拠とした人証は被上告会社の利害関係者であり、書証(甲号証)も後日作為が加えられた疑いがあるほか、単なる仮払を認め得るに過ぎないものであると主張した。これに対し、原審はこれら証拠を総合して、本件金員が売買代金として授受された事実を認定した。
あてはめ
上告人は、書証が仮払金支出の事実を認めるに過ぎないと主張するが、原審は当該書証のみならず、挙示する人証とあわせて証拠力を判断している。利害関係人の供述が含まれるとしても、どの証拠を信じ、どのような事実を認定するかは裁判所の専権事項である。本件において、複数の証拠から金員が売買代金として授受されたと結論付けた判断過程には、論理的矛盾や経験則への抵触は認められない。
結論
本件事実認定に実験則違反や審理不尽の違法はない。したがって、原判決の認定は適法であり、上告を棄却する。
事件番号: 昭和33(オ)860 / 裁判年月日: 昭和35年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】請求の主要な争点である事実が認められない場合には、その余の事実関係を確定することなく直ちに請求を棄却することができる。裁判所が主要事実の存否につき証拠を検討し、これを認められないと判断した過程に自由心証の逸脱がなければ、判決に違法はない。 第1 事案の概要:上告人は被上告人に対し、本件家屋を買い受…
実務上の射程
民事訴訟における事実認定論の基本(自由心証主義)を確認する判例。証拠の総合評価によって、間接的な証拠から主要事実を認定する手法の正当性を示す際、特に相手方の「証拠が不十分である」という反論に対する再反論の文脈で活用できる。
事件番号: 昭和24(オ)336 / 裁判年月日: 昭和27年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠の取捨選択および事実の認定は裁判所の専権に属し、伝聞供述や親族の証言から直ちに事実を認定すべき義務はない。自由心証主義に基づき合理的な範囲で行われた事実認定は、適法である。 第1 事案の概要:上告人(被告)は、本件各家屋が先代の所有であると主張し、証人Dが「家屋は先代のために建てるものと聞いた…
事件番号: 昭和33(オ)258 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】原審が行った証拠の取捨選択および事実認定が適法である限り、上告審においてこれと異なる事実を主張して原判決を非難することは、上告理由にならない。 第1 事案の概要:上告人らは、原審が認定した売買の事実について、証拠の取捨選択や事実認定に誤りがあるとして、原判決の違法を主張し、上告を申し立てた。なお、…
事件番号: 昭和25(オ)141 / 裁判年月日: 昭和28年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】私文書は、本人又はその代理人の署名又は捺印があるときは、民事訴訟法第228条第4項(旧326条)により、その成立が真正であるものと推定される。 第1 事案の概要:本件家屋の売買代金残額2000円の授受等をめぐる紛争において、証拠として提出された私文書(甲第8号証の1、2)について、上告人の署名捺印…
事件番号: 昭和41(オ)855 / 裁判年月日: 昭和42年1月26日 / 結論: 棄却
売主甲の代理人乙と買主丙との間に売買契約が成立したとの主張に対し、甲の代理人丁が乙の仲介により丙との間に当該売買契約を成立させた事実を認定した点に弁論主義違反の違法はない。