判旨
証拠の取捨選択および事実の認定は裁判所の専権に属し、伝聞供述や親族の証言から直ちに事実を認定すべき義務はない。自由心証主義に基づき合理的な範囲で行われた事実認定は、適法である。
問題の所在(論点)
証拠の取捨選択および事実認定における裁判所の裁量の限界。具体的には、伝聞供述(間接事実)の評価や、証人と当事者の親族関係が直ちに証言の信用性を否定する理由となるか(民事訴訟法における自由心証主義の妥当性)。
規範
事実の認定およびその基礎となる証拠の取捨選択は、特段の事情がない限り、裁判所の専権(自由心証主義)に属する。伝聞に基づく供述や、当事者と親近関係にある者の供述の信用性判断もまた、裁判官の合理的な裁量に委ねられる。
重要事実
上告人(被告)は、本件各家屋が先代の所有であると主張し、証人Dが「家屋は先代のために建てるものと聞いた」、証人Gが「先代から、家屋は子が15歳になったらその名義にすると聞いた」との証言を行った。これに対し、原審はこれらの証言を排斥し、被上告人(原告)側の親族等の証言を採用して上告人の主張を認めなかった。上告人は、伝聞証言を軽視し、虚偽の疑いがある親族の証言を採用した事由等を不服として上告した。
あてはめ
証人DおよびGの証言は、いずれも「〜と聞いた」という伝聞にすぎず、対象家屋が先代の所有であることを確定的に述べるものではない。したがって、裁判所がこれらの証言から所有の事実を認めなかったことは不合理ではない。また、被上告人側の証人が親族であることや、審級間で証言に差異があることのみをもって、直ちにその証言が虚偽であると断定することはできない。その他、上告人が援用する証拠を総合しても、上告人の主張事実を認定すべき必然性は認められない。
結論
原判決の事実認定に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
実務上、自由心証主義(民訴法247条)に基づく事実認定を上告審で覆すことの困難さを示す。特に伝聞供述や親族証言の評価は専ら事実審の専権事項であることを確認しており、証拠法則の違反を主張するには、その認定が経験則や論理則に明白に反することを具体的に示す必要がある。
事件番号: 昭和35(オ)312 / 裁判年月日: 昭和35年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定の前提となる証拠の取捨判断は、特段の事情がない限り事実審の専権に属する事項であり、これに対する不服は上告理由とならない。 第1 事案の概要:被上告人が本件土地建物を大正4年頃に訴外Dから買い受け、現に所有しているとの事実を一審判決が認定し、原審もこれを引用した。これに対し、上告人らは独自の…
事件番号: 昭和34(オ)812 / 裁判年月日: 昭和37年5月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の所有権の帰属および共有関係の成否について、証拠の取捨選択および事実認定は、挙示の証拠関係に照らし合理的な範囲内であれば、原審の裁量として是認される。 第1 事案の概要:本件家屋が被上告人の単独所有であるか、あるいは上告人らの共有であるかが争われた。原審は、特定の書証(甲5号証、乙1号証)を…
事件番号: 昭和25(オ)251 / 裁判年月日: 昭和28年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が人証と書証を総合して事実認定を行うことは、個々の証拠が直接的に特定の事実を証明するに足りない場合であっても、自由心証主義の範囲内として許容される。 第1 事案の概要:上告人は、本件売買契約について証書の作成や代金の受取証が存在しないことを指摘。原審が認定の根拠とした人証は被上告会社の利害関…
事件番号: 昭和35(オ)276 / 裁判年月日: 昭和37年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者の主張する契約関係と裁判所が認定した契約関係との間に社会観念上の同一性が認められる場合、裁判所が当該認定に基づき判決しても処分権主義に反しない。また、主たる賃貸借契約が終了した場合、これに付随し運命を共にする趣旨の従たる転貸借契約も当然に終了する。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)は、建…