具体的理由を判示することなく書証を排斥したことが違法でないとされた事例
判旨
不動産の所有権の帰属および共有関係の成否について、証拠の取捨選択および事実認定は、挙示の証拠関係に照らし合理的な範囲内であれば、原審の裁量として是認される。
問題の所在(論点)
不動産の単独所有または共有関係を認定するにあたり、原審が特定の証拠を排斥し、一方の当事者の単独所有を認めた事実認定および証拠の取捨選択に違法があるか。
規範
事実の認定およびその基礎となる証拠の取捨選択は、特段の事情がない限り、原審の専権に属する。具体的には、挙示された証拠関係に照らして首肯し得る合理的な事実認定がなされているか、また主要な争点に関係しない証拠を排斥した処置が合理的であるかによって判断される。
重要事実
本件家屋が被上告人の単独所有であるか、あるいは上告人らの共有であるかが争われた。原審は、特定の書証(甲5号証、乙1号証)を採用しなかった。その理由は、証拠の記載、体裁、および当事者尋問の結果から、これらが本件の主要な争点である「共有関係の成否」や「持分の放棄」に直接関係しないと判断したためであった。上告人は、この原審の証拠取捨および事実認定を不服として上告した。
あてはめ
原審が本件家屋を被上告人の単独所有と推定し、上告人らの共有と認めなかった事実は、挙示された証拠関係に照らして首肯できる。また、原審が特定の書証を採用しなかった点についても、その記載内容や体裁、尋問結果を総合すれば、本件の主要な争点(共有関係の有無および持分放棄の有無)に直接の関係がないものと解することが可能である。したがって、原審の処置は適法な証拠の取捨選択の範囲内にあるといえる。
結論
事件番号: 昭和24(オ)336 / 裁判年月日: 昭和27年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠の取捨選択および事実の認定は裁判所の専権に属し、伝聞供述や親族の証言から直ちに事実を認定すべき義務はない。自由心証主義に基づき合理的な範囲で行われた事実認定は、適法である。 第1 事案の概要:上告人(被告)は、本件各家屋が先代の所有であると主張し、証人Dが「家屋は先代のために建てるものと聞いた…
本件家屋は被上告人の単独所有と認められ、原審の事実認定に違法はないため、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、自由心証主義に基づく事実認定および証拠の取捨選択に関する典型的な判断を示したものである。答案上は、不動産の所有権帰属等の事実認定において、下級審の判断が合理的な証拠の評価に基づいている限り、上告審での争点化は困難であることを示す事例として活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)242 / 裁判年月日: 昭和32年7月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物所有権の帰属について、工事代金、固定資産税、地代等の支払事実があったとしても、それらが特定の経緯に基づき行われたものであれば、直ちに所有権の所在を左右するものではない。 第1 事案の概要:亡Dの所有であった本件家屋について、その占有者である上告人およびその夫Eが、工事代金、固定資産税、および地…
事件番号: 昭和35(オ)276 / 裁判年月日: 昭和37年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者の主張する契約関係と裁判所が認定した契約関係との間に社会観念上の同一性が認められる場合、裁判所が当該認定に基づき判決しても処分権主義に反しない。また、主たる賃貸借契約が終了した場合、これに付随し運命を共にする趣旨の従たる転貸借契約も当然に終了する。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)は、建…
事件番号: 昭和35(オ)172 / 裁判年月日: 昭和36年6月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の単独所有権を前提として登記抹消を請求する場合、裁判所は当事者の主張しない共有持分権に基づく請求について審理判断すべきではなく、釈明義務も負わない。 第1 事案の概要:上告人は、対象不動産について自己が単独所有権を有することを前提として、登記の抹消を求めて提訴した。原審は、上告人に単独所有権…
事件番号: 昭和38(オ)164 / 裁判年月日: 昭和39年5月26日 / 結論: 棄却
登記義務者の意思に基づかない登記であつても、現在の実体的権利関係に符合するものであるかぎり、右意思に基づかないとして、当該登記の抹消登記請求をすることは理由がない。