判旨
建物所有権の帰属について、工事代金、固定資産税、地代等の支払事実があったとしても、それらが特定の経緯に基づき行われたものであれば、直ちに所有権の所在を左右するものではない。
問題の所在(論点)
建物に関する諸経費(工事代金、固定資産税、地代)を占有者が負担しているという事実がある場合に、それをもって直ちに当該建物の所有権が占有者に帰属すると判断すべきか。
規範
不動産の所有権の帰属については、工事代金の負担、公租公課(固定資産税等)の納付、敷地利用料(地代)の支払といった外形的事実のみならず、それらの支払が行われるに至った具体的な経緯や、当該建物の管理・使用に至る背景事情を総合して判断すべきである。
重要事実
亡Dの所有であった本件家屋について、その占有者である上告人およびその夫Eが、工事代金、固定資産税、および地代を支払っていた。上告人側はこれらの支払事実を根拠に、本件家屋はDの死亡当時、Dの所有に属していなかった(上告人側の所有であった)と主張した。
あてはめ
上告人らが工事代金、固定資産税、地代等を支払った事実は認められる。しかし、これらの支払は原審が認定した「各経緯」に起因するものであり、その経緯を考慮すれば、当該支払事実は本件建物がDの死亡に至るまでDの所有であったとの認定を覆すに足りない。また、上告人がD所有の家屋を使用していた権原や期間を詳細に特定せずとも、支払の経緯に基づき所有権の帰属を判断することは適法である。
結論
本件建物の所有権はDの死亡当時においても依然としてDに帰属していたと解するのが相当であり、上告人の主張は認められない。
実務上の射程
事件番号: 昭和34(オ)812 / 裁判年月日: 昭和37年5月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の所有権の帰属および共有関係の成否について、証拠の取捨選択および事実認定は、挙示の証拠関係に照らし合理的な範囲内であれば、原審の裁量として是認される。 第1 事案の概要:本件家屋が被上告人の単独所有であるか、あるいは上告人らの共有であるかが争われた。原審は、特定の書証(甲5号証、乙1号証)を…
所有権の帰属が争われる場面において、公租公課の負担等の事実は有力な推認資料となるが、それ以上に支払の「原因・経緯」という実質的評価が優先されることを示した。答案上は、所有権の帰属を論じる際、形式的な負担事実のみならず、その負担がなされた背景事情を考慮する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)315 / 裁判年月日: 昭和39年1月30日 / 結論: その他
一 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は乙丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。 二 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。
事件番号: 昭和34(オ)960 / 裁判年月日: 昭和35年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の共有者は、保存行為として、共有不動産について無断でなされた不実の登記の抹消を単独で請求することができる。 第1 事案の概要:上告人らは、本件家屋が亡父Dの新築所有にかかり、その死亡により共同相続人である上告人ら両名の共有に属するものであると主張した。これに対し、被上告人B1は無断で自己名義…
事件番号: 昭和32(オ)748 / 裁判年月日: 昭和35年2月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の所有権取得に関する当事者双方の主張事実が証拠上認められない場合、公簿(登記簿等)の記載をもって一応真実の権利状態に適合するものと推定し、事実認定を行うことは適法である。 第1 事案の概要:本件家屋の所有権取得をめぐり、原告・被告双方が自己の所有権を主張したが、原審において双方の主張する取得原…
事件番号: 昭和31(オ)103 / 裁判年月日: 昭和33年7月22日 / 結論: 棄却
一 組合財産についても、民法第六六七条以下において特別の規定のなされていない限り、民法第二四九条以下の共有の規定が適用される。 二 組合員の一人は、単独で、組合財産である不動産につき登記簿上の所有名義者たる者に対して登記の抹消を求めることができる。