一 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は乙丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。 二 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。
一 共同相続人の一人が勝手にした単独所有の登記の他の共同相続人に対する効力 二 共有持分に基づく登記抹消請求の許否
民法177条,民法249条,不動産登記法63条
判旨
共同相続人の一人が勝手に単独名義で登記し第三者に譲渡した場合、他の共同相続人は自己の持分を登記なくして対抗でき、その妨害排除は持分のみの更正登記手続によるべきである。
問題の所在(論点)
1. 共同相続人の一人から単独名義の登記を経て持分を譲り受けた第三者は、民法177条の「第三者」として、登記のない他の共同相続人に対し持分取得を否定できるか。 2. 他の共同相続人が、登記名義人に対し妨害排除請求を行う場合、登記全部の抹消を求めることができるか。
規範
1. 共同相続された不動産につき、相続人の一人が勝手に自己名義で所有権移転登記を経由し、これを第三者に譲渡した場合、他の共同相続人は、自己の持分については登記なくして譲受人に対抗できる。 2. この場合、他の共同相続人が妨害排除として請求できるのは、所有権移転登記全部の抹消ではなく、自己の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続である。
重要事実
不動産所有者Dが死亡し、被上告人ら3名およびEの計4名が共同相続した。しかし、Eは勝手に単独相続を原因とする所有権移転登記を経由した上で、Fを経て上告人に本件不動産を売却し、順次所有権移転登記がなされた。被上告人らは、上告人に対し、自己らの持分を主張して所有権移転登記の全部抹消を求めて提訴した。なお、Eの本来の持分は9分の2であった。
事件番号: 昭和35(オ)1197 / 裁判年月日: 昭和38年2月22日 / 結論: 棄却
一 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。 二 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。 三 …
あてはめ
1. 上告人は、Eの共同相続人としての共有持分(9分の2)を取得したにすぎない。被上告人ら3名の持分については、Eが無権利者として登記したものであるから、上告人はその持分につき登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に該当しない。したがって、被上告人らは登記なくして持分を対抗できる。 2. もっとも、上告人はEから承継した9分の2の範囲では有効な持分を有している。登記を実体権利に合致させるためには、全部抹消ではなく、被上告人らの持分部分についてのみ更正登記をすべきである。
結論
被上告人らは、自己の持分(合計9分の7)について、登記なくして上告人に対抗できる。ただし、請求できるのは全部抹消ではなく、上告人の持分9分の2を残す更正登記手続に限られる。
実務上の射程
共同相続と登記に関する基本判例である。相続放棄や遺産分割後の第三者との関係(177条が適用される場面)と、本事案のような「相続開始時における当然の共有持分」の侵害の場面(177条が適用されない場面)を峻別して論述する必要がある。また、妨害排除請求の対象が「持分の限度」に制限される点も、訴訟物や請求趣旨の検討において重要である。
事件番号: 昭和37(オ)396 / 裁判年月日: 昭和40年10月12日 / 結論: 棄却
第一審判決主文に民訴法第一九四条にいう明白な誤謬がある場合、控訴裁判所が控訴棄却の判決をするにあたり判決の理由中に理由を示し主文において右誤謬を更正しても違法ではない。
事件番号: 昭和34(オ)960 / 裁判年月日: 昭和35年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の共有者は、保存行為として、共有不動産について無断でなされた不実の登記の抹消を単独で請求することができる。 第1 事案の概要:上告人らは、本件家屋が亡父Dの新築所有にかかり、その死亡により共同相続人である上告人ら両名の共有に属するものであると主張した。これに対し、被上告人B1は無断で自己名義…
事件番号: 昭和38(オ)1395 / 裁判年月日: 昭和40年9月10日 / 結論: 棄却
共有者の一人から物件の所有権を買い受けた者は、他の共有者に対し、改めて、所有の意思で占有する旨を表示しなくても、所有権の取得時効の要件たる所要の意思をもつて占有をはじめたというべきである。
事件番号: 昭和31(オ)242 / 裁判年月日: 昭和32年7月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物所有権の帰属について、工事代金、固定資産税、地代等の支払事実があったとしても、それらが特定の経緯に基づき行われたものであれば、直ちに所有権の所在を左右するものではない。 第1 事案の概要:亡Dの所有であった本件家屋について、その占有者である上告人およびその夫Eが、工事代金、固定資産税、および地…