共有者の一人から物件の所有権を買い受けた者は、他の共有者に対し、改めて、所有の意思で占有する旨を表示しなくても、所有権の取得時効の要件たる所要の意思をもつて占有をはじめたというべきである。
共有者の一人から物件を買い受けた者は、所有権の時効取得を主張するためには他の共有者に対し自主占有の意思を主張することが必要か
民法162条,民法249条
判旨
共有者の一人が共有物を自己の単独所有物として売却した場合、買受人は、他の共有者に対し単独所有の意思を表示しなくても、引渡しを受けた時点から「所有の意思」をもって占有を開始したと認められる。
問題の所在(論点)
共有者の一人から共有物を単独所有物として買い受けた者が、民法162条1項の取得時効を主張する場合、他の共有者に対して「単独所有の意思」を表示する必要があるか。また、無権利者として登記名義を有する者に対し、時効取得者は登記なくして権利を対抗できるか。
規範
売買の目的物が共有に属する場合であっても、売主が当該物件を単独所有に属するものとして売り渡したときは、買受人は外部の第三者であるから、引渡しを受けた時点で所有の意思をもって占有を開始したと解するのが相当である。この場合、他の共有者に対し、特に単独所有の意思をもって占有する旨を表示することは不要である。
重要事実
本件山林は本来共有物であったが、共有者の一人がこれを自己の単独所有物であるとして、被上告人の先代に売り渡した。被上告人側は引渡しを受け、20年以上にわたり占有を継続した。一方、上告人らは当該山林について共有持分取得の登記を経由していたが、原審によれば上告人らは実体法上の権利を有しない無権利者であった。上告人らは、買受人が他の共有者に対して単独所有の意思を表示していない以上、取得時効の要件である「所有の意思」が認められないと主張して争った。
事件番号: 昭和36(オ)315 / 裁判年月日: 昭和39年1月30日 / 結論: その他
一 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は乙丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。 二 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。
あてはめ
買受人は共有関係の内部者ではなく外部の第三者である。売主が単独所有物として売り渡し、買受人がその前提で引渡しを受けた以上、その占有は客観的にみて所有者としてなされるものであり、特段の表示がなくても権原の性質上「所有の意思」があるといえる。また、上告人らは実体法上の権利を有しない無権利者であり、不動産物権変動の登記を欠くことを主張する正当な利益を有する「第三者」(民法177条)には該当しない。したがって、被上告人は登記なくして所有権を対抗できる。
結論
買受人は他の共有者への意思表示なくとも所有の意思をもって占有を開始したと認められ、20年の経過により取得時効が成立する。また、無権利者に対しては登記なくしてその所有権を対抗できる。
実務上の射程
共有持分の譲渡ではなく「単独所有物としての売却」という外形的客観的事実があれば、他主占有から自主占有への転換(民法185条)の議論を経ることなく、占有開始時からの自主占有を肯定できる点に実務上の意義がある。また、無権利者が登記を具備していても177条の第三者に当たらないという準則を再確認している。
事件番号: 昭和35(オ)198 / 裁判年月日: 昭和38年10月15日 / 結論: 棄却
登記簿上の現所有者名義人は、前所有名義人から不動産所有権を取得したと主張する場合には、前所有名義人に対し、登記の推定力を援用し得ない。
事件番号: 昭和37(オ)396 / 裁判年月日: 昭和40年10月12日 / 結論: 棄却
第一審判決主文に民訴法第一九四条にいう明白な誤謬がある場合、控訴裁判所が控訴棄却の判決をするにあたり判決の理由中に理由を示し主文において右誤謬を更正しても違法ではない。
事件番号: 昭和24(オ)326 / 裁判年月日: 昭和25年9月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他主占有から自主占有への転換が認められるためには、権原の性質上所有の意思がないものと認定される占有において、客観的にみて所有の意思があるものと解される事情が必要である。 第1 事案の概要:被上告人の先代Dは、本件不動産を「家産」として所有し、その散逸を防止するために上告人A1夫婦に管理させていた。…
事件番号: 昭和34(オ)960 / 裁判年月日: 昭和35年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の共有者は、保存行為として、共有不動産について無断でなされた不実の登記の抹消を単独で請求することができる。 第1 事案の概要:上告人らは、本件家屋が亡父Dの新築所有にかかり、その死亡により共同相続人である上告人ら両名の共有に属するものであると主張した。これに対し、被上告人B1は無断で自己名義…