当事者の申し立てない事項につき判決した場合にあたらないとされた事例
判旨
当事者の主張する契約関係と裁判所が認定した契約関係との間に社会観念上の同一性が認められる場合、裁判所が当該認定に基づき判決しても処分権主義に反しない。また、主たる賃貸借契約が終了した場合、これに付随し運命を共にする趣旨の従たる転貸借契約も当然に終了する。
問題の所在(論点)
裁判所が当事者の明示的な主張と異なる契約態様(複合的契約)を認定して判決することが処分権主義(民訴法246条)に反するか。また、主たる建物の賃貸借契約の解除が、付随する土地の転貸借関係にどのような影響を及ぼすか。
規範
1. 処分権主義の観点から、裁判所が認定した法律関係が当事者の主張した事実と社会観念上の同一性を有する限り、判決の基礎とすることは許容される。2. 複数の契約が締結された場合において、ある契約(従たる契約)が他の契約(主たる契約)に付随し、その存続について運命を共にする趣旨であると解されるときは、主たる契約の終了に伴い従たる契約も当然に終了する。
重要事実
賃貸人(被上告人)は、建物(第一建物)の賃貸借契約解除に基づき、その明渡しと、敷地内にある別の建物(第二建物)の収去・土地明渡しを求めた。原審は、第一建物の賃貸借、土地の一部の転貸借、及び煉瓦塀の使用を含む「複合的な一個の契約」が成立し、賃料不履行により解除されたと認定した。これに対し、賃借人(上告人)は、裁判所が当事者の主張しない事実(複合的契約)に基づき判決したことは処分権主義等に反すると主張して上告した。
あてはめ
被上告人は第一建物の賃貸借解除を主張しており、これには敷地利用を含む契約関係の終了という主張が黙示的に包含されている。原審が認定した「複合的契約」は、被上告人が主張した契約関係と社会観念上の同一性が認められるため、処分権主義には反しない。また、第二建物の敷地転貸借は第一建物の賃貸借に付随し運命を共にするものであるから、第一建物の賃貸借契約が賃料不履行で終了した以上、転貸借関係も当然に終了する。したがって、結論において原判決に違法はない。
事件番号: 昭和36(オ)513 / 裁判年月日: 昭和36年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲受人等の第三者が民法177条の「第三者」に該当しないとされるためには、単に権利の存在を知っているだけでは足りず、相手方の登記の欠如を主張することが信義則(民法1条2項)に反すると認められるほどの強い「害意」を有する背信的悪意者であることを要する。 第1 事案の概要:上告人(被告)は本…
結論
原判決に処分権主義違反の違法はなく、主たる賃貸借の終了により付随する転貸借も終了するため、建物の収去及び土地明渡し請求は認容される。
実務上の射程
処分権主義における「申立て事項」の解釈につき、社会観念上の同一性を基準に柔軟に認める実務上の指針となる。また、主従の関係にある複数契約の帰趨(一蓮托生の関係)を認定する際の解釈手法として、契約の付随性・運命共同体性を論じる際の論拠として有用である。
事件番号: 昭和35(オ)234 / 裁判年月日: 昭和37年10月5日 / 結論: その他
甲乙丙三棟の建物を所有する債務者が、未登記の甲建物の所有権保存登記をなすべく司法書士に委任したところ、甲建物を主たる建物、乙丙建物を付属建物と表示する登記がなされ、次いで、債権者の手により甲乙丙建物を目的物とする抵当権設定登記が経由されたのに対し、抵当権設定契約の不存在を理由として右抵当権設定登記の抹消登記手続を請求す…
事件番号: 昭和24(オ)336 / 裁判年月日: 昭和27年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠の取捨選択および事実の認定は裁判所の専権に属し、伝聞供述や親族の証言から直ちに事実を認定すべき義務はない。自由心証主義に基づき合理的な範囲で行われた事実認定は、適法である。 第1 事案の概要:上告人(被告)は、本件各家屋が先代の所有であると主張し、証人Dが「家屋は先代のために建てるものと聞いた…
事件番号: 昭和34(オ)812 / 裁判年月日: 昭和37年5月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の所有権の帰属および共有関係の成否について、証拠の取捨選択および事実認定は、挙示の証拠関係に照らし合理的な範囲内であれば、原審の裁量として是認される。 第1 事案の概要:本件家屋が被上告人の単独所有であるか、あるいは上告人らの共有であるかが争われた。原審は、特定の書証(甲5号証、乙1号証)を…
事件番号: 昭和40(オ)554 / 裁判年月日: 昭和42年9月14日 / 結論: 棄却
甲に対して建物明渡を命じた判決に基づき、当該訴訟の原告乙の単独申請によつてされた右建物の所有権移転登記であつても、右登記が実体的権利関係に合致しているのみならず、甲が右登記義務履行について有する同時履行の抗弁権も消滅しており、かつ、登記当時他に右建物の帰属について利害関係を有する第三者が存在していない場合には、甲は、右…