判旨
証拠の取捨選択および事実の認定は、経験則に反するなどの違法がない限り、事実審裁判所の専権に属する。
問題の所在(論点)
事実審裁判所による証拠の取捨選択および事実認定が、上告審において破棄の対象となる「採証法則の違反」に該当するか否か。
規範
自由心証主義(民事訴訟法247条)に基づき、証拠の証明力の評価および事実認定は事実審裁判所の合理的な裁量に委ねられる。ただし、その判断が経験則や論理則に反する場合には、採証法則違反として上告理由となり得る。
重要事実
上告人は、原審が提出された証拠(甲第1、3、7号証、代表者本人訊問の結果等)の証明力を適切に評価せず、重要な証拠を看過して事実を誤認したと主張し、採証法則違反を理由に上告を提起した。
あてはめ
原判決は上告人が提出した全証拠について検討を加え、一部の証拠については信用性を否定し、その他の証拠によっても主張事実を認めるに足りないと判示している。この証拠の取捨判断および事実認定の過程において、経験則に反する等の違法は認められない。したがって、原審が上告人の主張事実を肯定しなかったことは、証拠の証明力に関する合理的な裁量の範囲内であるといえる。
結論
本件証拠の取捨判断等に違法はなく、原判決の判断は正当である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
事実認定に関する不服申し立ての限界を示す判例である。答案上は、事実認定の違法を主張する際に「経験則・論理則違反」という規範を示す根拠として用いる。ただし、単なる事実誤認の主張は上告理由にならないことを示す際にも有用である。
事件番号: 昭和24(オ)336 / 裁判年月日: 昭和27年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠の取捨選択および事実の認定は裁判所の専権に属し、伝聞供述や親族の証言から直ちに事実を認定すべき義務はない。自由心証主義に基づき合理的な範囲で行われた事実認定は、適法である。 第1 事案の概要:上告人(被告)は、本件各家屋が先代の所有であると主張し、証人Dが「家屋は先代のために建てるものと聞いた…
事件番号: 昭和24(オ)186 / 裁判年月日: 昭和26年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民事訴訟における証拠の取捨選択および事実認定は、原審の裁量に属する専権事項であり、単なる事実誤認の主張は適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、原審が行った証拠の取捨選択および事実認定に不服があるとして上告を申し立てた。しかし、判決文によれば、原審の証拠判断および事実認定の手続き…
事件番号: 昭和31(オ)470 / 裁判年月日: 昭和32年5月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠の取捨判断およびそれに基づく事実認定は、特段の事情がない限り、原審の専権に属する事項である。本件においても、提出された書証が証人尋問の結果を覆すに足りる反証とならないとした原審の判断に違法はない。 第1 事案の概要:上告人は、本件公正証書の作成前に甲号各証を被上告人に交付したと主張し、それを裏…
事件番号: 昭和33(オ)448 / 裁判年月日: 昭和33年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が原審の証拠取捨や事実認定を非難するにすぎない場合、それは適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が引用する第一審判決の事実認定に不服があるとして上告を申し立てた。具体的には、原審の証拠の取捨選択およびそれに基づく事実認定を非難する内容を上告理由として主張した。 …