売主甲の代理人乙と買主丙との間に売買契約が成立したとの主張に対し、甲の代理人丁が乙の仲介により丙との間に当該売買契約を成立させた事実を認定した点に弁論主義違反の違法はない。
弁論主義違反がないとされた事例
民訴法186条
判旨
売買によって実体上の所有権を取得した者が、登記原因を「売買予約」と虚偽の記載をして仮登記を経由した場合であっても、当該仮登記は直ちに無効とはならず、実体的権利関係に合致する本登記を請求できる。
問題の所在(論点)
実体上は売買によって所有権を取得しているにもかかわらず、登記原因を「売買予約」としてなされた仮登記が有効か、また、これに基づき本登記を請求できるかが問題となる。
規範
登記原因が実体上の権利変動の過程と一致しない虚偽の記載であっても、それが現在の実体的権利関係を公示する手段としてなされたものであり、かつ、その登記を基礎として本登記をなすべき実体上の根拠が存在する場合には、当該登記は無効とはならない。
重要事実
被上告人は、上告人から家屋を買い受け、代金を完済して所有権を取得した。被上告人は転売を予定していたため、登記費用や名義書替料を節約する目的で、実際には存在しない「売買予約」を登記原因として、所有権移転請求権保全の仮登記を経由した。その後、被上告人は上告人に対し、当該仮登記に基づく本登記手続を求めて提訴した。
事件番号: 昭和40(オ)646 / 裁判年月日: 昭和41年9月16日 / 結論: 棄却
登記原因の記載が実質上の権利関係と喰い違つていても、当該仮登記が特定の不動産の所有権移転請求権を保全するための仮登記として同一性を害するものと認められない限り、更正登記手続を経るまでもなく、これを無効と解すべきではない。(昭和三七年七月六日第二小法廷判決、民集一六巻七号一四五二頁参照)
あてはめ
本件において、被上告人は代金完済により実体上の所有権を確定的に取得しており、登記義務者である上告人に対して移転登記を請求し得る地位にある。仮登記の原因が「売買予約」とされた点は事実と異なるが、被上告人に所有権が帰属しているという実体関係自体に変わりはない。したがって、当該仮登記は不実の記載を含むものの、現在の実体的権利関係を保全・反映する枠組みとして機能しており、無効と解すべきではない。そのため、実体上の権利者である被上告人は、本登記を請求することができる。
結論
登記原因の記載が虚偽であっても、実体的権利関係に合致する限り、当該仮登記に基づき本登記を請求することは認められる。
実務上の射程
物権変動の過程と登記名義が一致しない「中間省略登記」や「登記原因の更正」に関する論点において、実体的権利関係との合致を重視する判例法理として引用できる。答案上は、登記の有効性を判断する際の「実体的権利関係との合致」の具体例として活用すべきである。
事件番号: 昭和25(オ)251 / 裁判年月日: 昭和28年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が人証と書証を総合して事実認定を行うことは、個々の証拠が直接的に特定の事実を証明するに足りない場合であっても、自由心証主義の範囲内として許容される。 第1 事案の概要:上告人は、本件売買契約について証書の作成や代金の受取証が存在しないことを指摘。原審が認定の根拠とした人証は被上告会社の利害関…
事件番号: 昭和33(オ)860 / 裁判年月日: 昭和35年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】請求の主要な争点である事実が認められない場合には、その余の事実関係を確定することなく直ちに請求を棄却することができる。裁判所が主要事実の存否につき証拠を検討し、これを認められないと判断した過程に自由心証の逸脱がなければ、判決に違法はない。 第1 事案の概要:上告人は被上告人に対し、本件家屋を買い受…
事件番号: 昭和25(オ)141 / 裁判年月日: 昭和28年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】私文書は、本人又はその代理人の署名又は捺印があるときは、民事訴訟法第228条第4項(旧326条)により、その成立が真正であるものと推定される。 第1 事案の概要:本件家屋の売買代金残額2000円の授受等をめぐる紛争において、証拠として提出された私文書(甲第8号証の1、2)について、上告人の署名捺印…
事件番号: 昭和25(オ)105 / 裁判年月日: 昭和28年2月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約において、代理人が本人に代わって契約を締結する旨を表示した事実は、本人のためにすることを示したものとして顕名(民法99条1項)が認められる。また、契約成立の単なる経過的事由は請求を理由あらしめる主要事実ではないため、当事者の主張と多少異なる事実を認定しても弁論主義には反しない。 第1 事案…