判旨
売買の予約の成立を認めるためには、その前提となる事実について証拠に基づき合理的に認定する必要があり、供述内容が予約ではなく本契約の成立を指している場合には、予約の成立を認めることはできない。
問題の所在(論点)
証拠上は「売買契約(本契約)」の成立をうかがわせる供述がなされている場合に、これら証拠のみから「売買の一方の予約」の成立を認定することが、事実認定の合理性(理由不備の有無)の観点から許されるか。
規範
事実認定において、証拠の総合的な評価が経験則や論理法則に照らして不合理であってはならない。特に、契約の成立という法的性質が問題となる場合、証言内容が「本契約」の成立を示しているにもかかわらず、その証拠から「売買の一方の予約」を認定することは、証拠の客観的内容と認定事実が矛盾するため、理由不備の違法を構成する。
重要事実
被上告人(原告)が上告人(被告)から土地200坪を単価140円で購入したと主張し、売買一方の予約の成立が争点となった事案。第一審および原審は、証人D、E、Fの証言や本人尋問の結果を総合し、昭和23年9月頃に売買一方の予約が成立したと認定した。
あてはめ
証人E、Fおよび原告本人の供述内容は、いずれも「被告から本件土地を買い受けた(売買本契約の成立)」という点に帰着する。一方で、証人Dおよび被告本人の供述は契約成立自体を否認するものである。原判決が挙げた証拠群には、予約の成立を直接裏付ける具体的内容が含まれておらず、本契約の成立を主張する証拠から予約の成立を導き出すことは、証拠の評価として合理性を欠くといわざるを得ない。
結論
売買一方の予約の成立を認めた原判決の事実認定には理由不備の違法があるため、破棄を免れない。原判決中上告人敗訴部分を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
事件番号: 昭和30(オ)703 / 裁判年月日: 昭和33年2月13日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】履行不能による損害賠償額を算定する基準となる目的物の価格について、特段の事情がない限り短期間で大幅に騰貴することは考え難い。そのため、近接した時期の認定価格に著しい乖離がある場合、その合理的な理由を明らかにすべきである。 第1 事案の概要:被上告人が第三者Dに不動産を売却したことで履行不能となった…
司法試験の民事訴訟法における「事実認定の適法性」や「理由不備(民訴法312条2項6号等)」の文脈で使用する。証拠が示す内容と、認定された法的性質(予約か本契約か等)が齟齬をきたしている場合に、論理法則違反・理由不備を指摘する際の論拠となる。
事件番号: 昭和34(オ)343 / 裁判年月日: 昭和36年7月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代理人として売買契約等の交渉に当たった者が、真の買受人であるか、それとも本人の代理人として行動したに過ぎないかは、証拠を総合して判断される事実認定の問題である。本判決は、交渉の衝に当たった事実があるからといって直ちにその者を真の権利者と認めることはできないとした。 第1 事案の概要:第一審参加人E…
事件番号: 昭和33(オ)718 / 裁判年月日: 昭和36年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない契約条件(代金決済方法等)を認定して売買契約の効力を認めることは、当事者の主張・立証の範囲内であれば弁論主義に反しない。また、特定の買戻し合意や代金決済合意を含む売買契約であっても、直ちに公序良俗に反して無効となるものではない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は上告人(被…
事件番号: 昭和31(オ)934 / 裁判年月日: 昭和32年10月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買代金の支払事実が認められる場合であっても、それが客観的な面積の過誤に基づく精算の結果に過ぎないときは、当然に隣接地の売買契約が成立したとは認められない。 第1 事案の概要:上告人は、宅地(イ)を360坪として、訴外人に対し60坪分(1坪あたり375円、計22,500円)の代金を支払った。しかし…
事件番号: 昭和33(オ)554 / 裁判年月日: 昭和36年8月17日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】独立当事者参加訴訟において、一当事者が証書の成立を認める自白をしても、参加人がこれを争う以上、当該自白の効力は参加人には及ばず、二段の推定(民訴法228条4項)も適用されない。 第1 事案の概要:不動産所有権移転登記手続請求事件の控訴審において、第三者Aが民訴法47条に基づき独立当事者参加した。本…