判旨
履行不能による損害賠償額を算定する基準となる目的物の価格について、特段の事情がない限り短期間で大幅に騰貴することは考え難い。そのため、近接した時期の認定価格に著しい乖離がある場合、その合理的な理由を明らかにすべきである。
問題の所在(論点)
履行不能による損害賠償額の算定において、目的物の時価を認定する際に、短期間で大幅な価格変動があったとする認定が許容されるための要件および審理の程度が問題となる。
規範
債務不履行(履行不能)に基づく損害賠償額を算定する際、目的物の価格を認定するには、当該時期における時価を客観的に確定しなければならない。特に、短期間のうちに価格が著しく騰貴したと認定する場合には、特段の事情がない限り不自然であるから、その騰貴を裏付ける合理的理由および証拠が必要とされる。
重要事実
被上告人が第三者Dに不動産を売却したことで履行不能となった事案において、原審は、履行不能時(昭和24年5月30日)の不動産時価を売却価格である25万円と認定した。一方で、原審はその約半年後(同年12月頃)の価格を41万7000円と認定しており、短期間で約16万円以上も価格が騰貴した事実を前提としていた。
あてはめ
本件において、原審は約半年に満たない短期間で不動産価格が25万円から41万7000円へと約67%も騰貴したと認定している。しかし、不動産価格は特段の事情がない限り、これほど短期間に暴騰するとは考え難い。原審は、この暴騰の経緯について何ら合理的な説明をしておらず、漫然と各時点の価格を認定したに過ぎない。これは、事実認定における審理不尽および理由不備にあたる。
結論
原判決には審理不尽、理由不備の違法があるため、破棄を免れない。損害賠償額の基礎となる価格算定をやり直させるため、本件を差し戻す。
事件番号: 昭和33(オ)26 / 裁判年月日: 昭和34年7月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】売買の予約の成立を認めるためには、その前提となる事実について証拠に基づき合理的に認定する必要があり、供述内容が予約ではなく本契約の成立を指している場合には、予約の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)が上告人(被告)から土地200坪を単価140円で購入したと主張し、売買一…
実務上の射程
損害賠償額の算定基準時(履行不能時または中間最高価格等)における時価認定の合理性を争う際の論拠となる。特に、目的物の価格騰貴が激しい時期の事案において、単なる売却価格の認定だけでは足りず、価格変動の不自然さを指摘して事実認定の瑕疵を突く答案構成に有効である。
事件番号: 昭和35(オ)1163 / 裁判年月日: 昭和36年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の目的物である土地が第三者によって競落され、当該第三者のために所有権移転登記がなされた場合、売主の債務は特段の事情のない限り履行不能に陥る。 第1 事案の概要:上告人(売主)は、被上告人(買主)に対して本件土地を売り渡したが、その後、当該土地が訴外Dによって競落された。さらに、当該土地につ…
事件番号: 昭和28(オ)843 / 裁判年月日: 昭和30年7月5日 / 結論: 棄却
不動産の登記簿上の所有名義人は、真正の所有者に対し、その所有権の公示に協力すべき義務を有するものであるから、真正の所有者は、所有権に基き所有者名義人に対し、所有権移転登記の請求を為し得るものと解すのが相当である。
事件番号: 昭和33(オ)734 / 裁判年月日: 昭和35年6月2日 / 結論: 破棄差戻
金融業者が、金二〇万円を、弁済期一ケ月後、利息一ケ月九分の約で貸し付けるにあたり、借主が右債務の支払を怠つたときは、貸主はその支払にかえて時価八〇万円を下らない不動産の所有権を取得することができる旨代物返済の予約をした場合であつても、貸主が、巨利を博すべくはじめから右不動産を処分する意図をもつて、借主側の窮迫、無経験な…
事件番号: 昭和33(オ)554 / 裁判年月日: 昭和36年8月17日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】独立当事者参加訴訟において、一当事者が証書の成立を認める自白をしても、参加人がこれを争う以上、当該自白の効力は参加人には及ばず、二段の推定(民訴法228条4項)も適用されない。 第1 事案の概要:不動産所有権移転登記手続請求事件の控訴審において、第三者Aが民訴法47条に基づき独立当事者参加した。本…