不動産の登記簿上の所有名義人は、真正の所有者に対し、その所有権の公示に協力すべき義務を有するものであるから、真正の所有者は、所有権に基き所有者名義人に対し、所有権移転登記の請求を為し得るものと解すのが相当である。
不動産登記簿上の所有名義人に対し真正の所有者は移転登記を請求し得るか
民法177条
判旨
不動産の登記簿上の所有名義人は、真正の所有者に対しその所有権の公示に協力すべき義務を負う。したがって、真正の所有者は、所有権に基づき、登記名義人に対して所有権移転登記(真正な登記名義の回復)を請求することができる。
問題の所在(論点)
不動産の真正な所有者が、現在の登記名義人に対し、直接自己への所有権移転登記を請求できるか。いわゆる「真正な登記名義の回復」を原因とする移転登記請求の可否が問題となる。
規範
不動産の登記簿上の所有名義人は、真正の所有者に対し、その所有権の公示に協力すべき義務を有する。したがって、真正の所有者は、物権的請求権としての妨害排除請求の一内容として、登記名義人に対し所有権移転登記を請求し得る。
重要事実
本件不動産について、登記簿上の所有名義人(上告人)が存在するが、それとは別に真正な所有者(被上告人)が存在した。被上告人は、上告人に対して所有権に基づき所有権移転登記手続を求めて提訴した。第一審および控訴審は、上告人に対し移転登記を命じる判断を下したため、上告人がこれを不服として上告した。
事件番号: 昭和30(オ)869 / 裁判年月日: 昭和35年1月22日 / 結論: 棄却
乙名義で不動産を競落した甲から所有権を取得した丙は、乙に対して移転登記の請求をすることができる。
あてはめ
不動産登記制度は実体的な権利関係を正確に公示することを目的とする。登記名義人は、真正な所有者との関係において、正しい公示に協力すべき実体法上の義務を負うと解される。本件において、被上告人が真正な所有者であり、上告人が実体上の権利を有しない登記名義人であるならば、上告人は被上告人による所有権の公示を妨げている状態にあるといえる。したがって、被上告人は所有権に基づく妨害排除請求として、上告人に対し登記の移転を求めることができる。
結論
真正の所有者は、登記名義人に対し、所有権に基づき所有権移転登記手続を請求することができる。
実務上の射程
登記原因が実体と符合しない場合、中間省略登記の合意がないときや、無効な登記が重なった際の簡便な是正手段として「真正な登記名義の回復」を認めた極めて重要な判例である。答案上は、物権的妨害排除請求権の行使として構成する際に活用すべきである。
事件番号: 昭和39(オ)103 / 裁判年月日: 昭和40年3月16日 / 結論: 棄却
真正なる所有者がその所有名義を回復するには、必ずしも抹消登記手続をなすことを要せず、所有権移転の登記手続の方法によつてもこれをなしうると解するのが相当である。
事件番号: 昭和31(オ)510 / 裁判年月日: 昭和33年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の登記簿上の所有名義人は、真正の所有者に対し、所有権の公示に協力すべき義務を負うため、真正の所有者は名義人に対し、所有権移転登記を請求することができる。また、背信的悪意者など登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有しない者は、民法177条の「第三者」に該当しない。 第1 事案の概要:本件不動…
事件番号: 昭和33(オ)880 / 裁判年月日: 昭和36年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法177条の「第三者」とは、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する者を指す。したがって、不動産を不法に占有する者は、所有権の取得登記がないことを理由にその明渡請求を拒むことはできない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、債務者が貸金の弁済期に履行しないときは何らの意思表示を要せず貸金…
事件番号: 昭和33(オ)554 / 裁判年月日: 昭和36年8月17日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】独立当事者参加訴訟において、一当事者が証書の成立を認める自白をしても、参加人がこれを争う以上、当該自白の効力は参加人には及ばず、二段の推定(民訴法228条4項)も適用されない。 第1 事案の概要:不動産所有権移転登記手続請求事件の控訴審において、第三者Aが民訴法47条に基づき独立当事者参加した。本…