判旨
売買契約の目的物である土地が第三者によって競落され、当該第三者のために所有権移転登記がなされた場合、売主の債務は特段の事情のない限り履行不能に陥る。
問題の所在(論点)
不動産の二重譲渡や公売・競売により、目的物の所有権が第三者に移転し登記が具備された場合、売主の債務は履行不能(民法412条の2第1項、改正前415条)となるか。
規範
不動産の売買において、目的物たる土地が第三者によって競落され、かつ当該第三者への所有権移転登記が完了したときは、特段の事情のない限り、売主の買主に対する所有権移転登記義務等の債務は履行不能に帰する。
重要事実
上告人(売主)は、被上告人(買主)に対して本件土地を売り渡したが、その後、当該土地が訴外Dによって競落された。さらに、当該土地についてDを権利者とする所有権移転登記がなされたため、被上告人は上告人に対し、履行不能に基づく損害賠償を請求した。
あてはめ
本件において、上告人が被上告人に売り渡した土地は、訴外Dによって競落され、既にDへの所有権移転登記がなされている。これにより、上告人が被上告人に対して負っていた売主としての義務(所有権移転義務)は、社会通念上履行が不可能になったものと解される。本件において、履行不能を否定すべき「特段の事情」は認められない。
結論
上告人の債務は履行不能に帰したといえるため、履行不能による損害賠償請求を認容した原審の判断は正当である。
実務上の射程
不動産の物権変動において、登記の具備が履行不能の判断基準となることを示した。二重譲渡の事案や、本件のような競落による権利喪失の場面において、法的不能・物理的不能と並び、社会通念上の履行不能を基礎付ける際の標準的な規範として機能する。
事件番号: 昭和30(オ)703 / 裁判年月日: 昭和33年2月13日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】履行不能による損害賠償額を算定する基準となる目的物の価格について、特段の事情がない限り短期間で大幅に騰貴することは考え難い。そのため、近接した時期の認定価格に著しい乖離がある場合、その合理的な理由を明らかにすべきである。 第1 事案の概要:被上告人が第三者Dに不動産を売却したことで履行不能となった…
事件番号: 昭和36(オ)572 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
実体にそわない所有権移転登記は、その抹消登記手続がなされていなくても、第三者は右登記を受けた者の所有権取得を否認し得る。
事件番号: 昭和31(オ)32 / 裁判年月日: 昭和33年6月14日 / 結論: 破棄差戻
甲乙間になされた甲所有不動産の売買が契約の時に遡つて合意解除された場合、すでに乙からこれを買い受けていたが、未だ所有権移転登記を得ていなかつた丙は、右合意解除が信義則に反する等特段の事情がないかぎり、乙に代位して、甲に対し所有権移転登記を請求することはできない
事件番号: 昭和32(オ)495 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の解除を主張するにあたり、解除の意思表示が単なる事情の説明に留まらず、予備的な主張としてなされたといえるためには、文言上その趣旨が明らかでなければならない。また、催告を欠く解除の意思表示は、有効な解除としての効力を認められない。 第1 事案の概要:不動産の売買契約において、売主(上告人)が…
事件番号: 昭和34(オ)333 / 裁判年月日: 昭和36年9月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲渡において、後買主が登記を具備した場合、特段の事情がない限り、売主の前買主に対する登記移転義務は履行不能となる。また、中間省略登記がなされた場合であっても、それが実体上の権利関係に合致するものである限り、その有効性を否定することはできず、民法177条の対抗関係が維持される。 第1 事…